5年前の本欄に「刑事事件を素材とした倫理研修が必須だと思うのだが、どうだろうか。
フリードマンを持ち出さなくとも、傍目にも危ない橋を渡っている弁護士をしょっちゅう見かけるので、弁護士会には、選択的、あるいは第2問として、さもなくば刑事弁護研修として、刑事弁護倫理研修も考えて欲しいと思う。」と書いた。

それから5年、5年目研修が回ってきたが、なんと討論素材に刑事系の題材が含まれていた。曰く、(1)被告人が積極的に虚偽主張したいと求めてきた場合の国選弁護人の対応、(2)弁護人の心証において偽証と疑われる弁護側証人を申請するか、(3)刑事事件確定後に関連民事訴訟を受けた弁護士から事件記録提供を求められた場合の対応、というものである。
特に(1)はフリードマンの難問そのままであり、(2)もその変化系である。
こういう研修が編まれると言うことは(まさか本欄の影響でもあるまいから)時代の要請と言うことなのだろうか。
刑事弁護が目に見えて高度化する中で、(地域差はあろうが)無免許運転を容認するが如き国選制度は最早もたないのではないかと観測される中ではあるが、現状、国選制度が大きく変えられる(例えば高野隆弁護士が提唱される指名制度)見込みは無いので、そうであれば、既存の制度をなんとかましに回す上でこういう研修は次善のものではあろう。

なお、中身的なところでは、誠実義務と真実義務の相克、虚偽証拠提出禁止あたりは一通りでていたが、最終的な事件方針の決定主体が奈辺にあるかといったところまでは踏み込めていなかったように記憶している。

(弁護士 金岡)