少しく連載の間が空いてしまった。
次から次へと書きたいことが出てくると、順番の調整が上手く行かないこともある。

さて、連載冒頭から説明しているように、本件の当初の公訴事実(や、検察官の主張した筋書き)が歴史的事実に反していたことは客観的に明らかであり、その意味で本件は、DNA鑑定などから無実であると客観的に決定された数々の冤罪事件に連なるものである。

それだけに、(西弁護士の提唱する冤罪学や、ここ20年来提唱されている失敗学の見地から、)当初の公訴事実という冤罪を発生させた原因を分析し、二度と同じような事態を生じさせないよう、対策を講じなければならないはずである。
しかし、A氏を当初の公訴事実の筋書きで逮捕勾留した裁判所から詫びが入るわけでもなし、当初の公訴事実で有罪判決を書いた差戻前第1審の裁判官から謝罪があるわけでもない。検察庁からも音沙汰なしであり、彼/彼女らが何かしら振り返り反省しているとは到底、思われない。
では、A氏や、元弁護人が独自に冤罪原因を分析し、世に問うことが出来るかというと、例えば「取り調べ済みの関係各証拠」を公表しようとするだけで、目的外使用の壁に邪魔されるだろう。かくして、国家権力は無反省のままに冤罪のことなど忘れ、再度、自称被害者の虚偽に引きずられた逮捕勾留、有罪判決が登場するのは時間の問題である。

私如きが独りごちていたところで、自称被害者ら事件関係者に対しても客観性のある捜査を行うように制度が変わることなど無いだろうし(自称被害者ら事件関係者の事情聴取に録音録画を導入することは容易である。また、ひとまず携帯電話端末のクローンデータを保全しておいて貰うだけで、断然、違うのだが。)、検察庁や裁判所が冤罪被害者に対して検証結果を報告するような制度(医療事故調査制度があるなら、司法事故調査制度があったって良いはずであり、年間全国通して100やそこらの無罪事件について、検証PTを立ち上げるくらい、難しくもないだろう)が登場するはずもないだろうが、ともかく歯がゆい。

問題をここで終わらすにはどうにも残念であることに鑑み、やはり、X-Y間のメッセージ送受信履歴を隠し、虚偽の論告を行い、有罪判決を騙取した平間文啓検察官に対しては告訴告発、更に国賠等もを行おうという結論に至った。
本連載を締めるに辺り、告訴告発の主要部分を公開しておく。

【告訴(告発)事実】
1.公務員職権濫用罪及び特別公務員陵虐罪
被告訴人は、2021年7月8日から2021年8月31日にかけての当時、名古屋地方検察庁において検察官としての職務に従事していた者であるが、・・(略)・・①②の各事実がないことを知りながら、被告訴人において2021年7月8日の第5回公判期日にて陳述した論告において①②の各事実が証明十分であると主張し、もって、真実に反する同公訴事実に基づきA氏を有罪とすべきであると主張し、これにより、第一に、A氏の無罪宣告を受けるべき権利の行使を妨害し(刑法第193条、公務員職権濫用罪)、第二に、「裁判、検察若しくは警察の職務を行う者」として、その職務を行うに当たり、被告人であったA氏に対して陵辱の行為をした(刑法第195条1項、特別公務員陵虐罪)。
2.無印虚偽公文書作成・同行使罪
被告訴人は、前記1項記載の通り、①②の各事実がないことを知りながら、行使の目的で、①②の各事実が真実であるとの虚偽内容のある論告書面を作成し(刑法第156条)、これを第5回公判期日において陳述して行使した(刑法第158条1項)。

【犯行後の情状が悪質であること】
被告訴人は、X-Y間のメッセージ送受信履歴の内容が発覚して控訴審判決が主位的訴因についての有罪判決を破棄し、差し戻した後の差戻後第1審の公判を、2023年3月末まで担当していたが、その間、X-Y間のメッセージ送受信履歴の内容を知りながら、これに反する有罪主張を行い、結果として差戻前第1審判決という誤った判決を騙取してA氏を冤罪に陥れたことについて、一切、謝罪しなかった。
後任検察官が有罪主張を行えない主位的訴因で有罪判決を騙取したこと、差戻前第1審においてX-Y間のメッセージ送受信履歴の内容を把握していたことを踏まえれば、故意に冤罪を創りあげながら、一切、謝罪もしないという、現役検察官の職務犯罪として、考え得る限り最も悪質な情状の実情にあると言わなければならない。

(弁護士 金岡)