季刊刑事弁護117号から、「量刑問題研究会」による連載が開始されている。
共同研究をお願いした菅野弁護士が既に所属事務所HPで取り上げておられるが、遅ればせながら本欄でも紹介したい。

同号の研究の趣旨説明は、主として私が執筆した。
裁判員裁判を踏まえて、事件の社会的類型毎の量刑傾向が分析対象となっているが、そもそも、特定の社会的類型に対し、そのような量刑傾向になる必然性が、良く分からない。特に法益侵害を中心とした考え方からすると相容れない量刑の軽重差が、いつの間にか裁判員に押しつけられ、裁判例として量産され、量刑傾向として大きな顔をしている、という印象を拭えない。

こういう現象は古くからあった。
通り魔殺人は原則無期懲役、といった議論である。
今では特殊詐欺が代表格であろうが、普通の詐欺と被害結果が異ならなくても量刑は飛躍的に重い。量刑が多くの被告人の関心事であることからすれば、そこには理論的な裏打ちがなければならず、なんとなくでは許されまい。

こういった動機から、有志に協力をお願いし、研究を始めてみた訳である。
研究員は、117号で顕名表示してある。著名な刑事弁護士や著名な研究者で占められており、非常に刺激的である。
次回118号では、高村弁護士主筆で、通り魔殺人という社会的類型の量刑理論についての議論をお届けする予定である。

(弁護士 金岡)