岡崎支部の案件である(かれこれ2年ほど整理手続中)。

裁判所が弁護人申立の公務所照会を採用したところ、対象者の同意がなければ回答できないと、照会先が回答した。
そこで裁判所が検察官に対し(対象者は検察側証人となることが内定している)対象者の同意を得られるか打診したところ、なんと検察官は、「公務所照会は必要ないという立場なので協力しない」として、対象者への打診を拒否したとのことである(森川奈津検察官、松長曉里検察官)。裁判所も、検察官が対象者への打診すら行わなかったことを把握しておらず、結論として対象者同意が得られない程度にしか理解していなかったというから二度、驚きである。

本欄では、しばしば検察官の「非・公益の代表者性」を取り上げているが、これもその一群に加わる資格があるし、なんなら幹部候補であろう。整理手続事案であるから、法316条の3第2項を引用すれば良いだろうか。検察官は充実した公判審理に向けて「裁判所に進んで協力しなければならない」のである。
自分の反対した公務所照会が採用されました、反対なので協力しません、などというのは・・まぁ子どもじみているし、被告人の権利や弁護活動への理解は寸毫もない。間違っても冤罪を生まないよう、被告人の権利や弁護活動も全力で擁護し、手続保障を尽くさせるのが、検察官のあるべき姿ではないのだろうか。

腹立たしいのも勿論だが、情けない。こんな不出来(というと不出来の方が怒るだろうが)な検察官を産み出した日本の司法教育には、大きな欠陥があるのだろう。

ついでに、この検察官らは証言予定開示義務の履行も拒否すると明言した。
検察側は、専門家証人の尋問において、「A」という専門的知見について説明を求める予定だと述べたが、それが証言予定においては開示されていない(「A」という概念は記載がある。しかし、それについて具体的説明を求める証言予定の記載がない。)。
弁護人が開示を求めたところ、「開示するつもりはない」「一言一句開示する必要はない」とこうである。「A」という概念について反対尋問準備できないじゃないかと抗議しても無視。

不出来な検察官に何を期待しても無駄というものであるが、重ねて情けない思いである。
果たしてこの裁判は、被告人のために行われるのだろうか。
大げさではなく被告人の人生がかかっている裁判において、一つ一つ手続保障を全うしつつ、準備し進めることとは真逆に、被告人に利することは裁判所に対する協力義務すら怠り、証言予定を開示せず尋問で不意打ちを狙う(としか思えない)・・こんなものは裁判ではないし、憲法の理想からは真逆である。

(弁護士 金岡)