身体拘束にかかる裁判理由が抽象的すぎて何も分からないという問題は、本欄で何度か取り上げている話題である(例えば2019年11月20日付け「身体拘束に係る裁判理由の空疎化」)。当初決定は言うまでもなく、準抗告審の判断すらコピペ紛いの抽象論。そして特別抗告審は判で押したような三行半。
これで何が手続の透明性であり、何が不服申立の便宜なのか、手続保障の名が泣いているというしかない。

かといって諦めてはならないし、諦める気も毛頭無いので、時に同じ話題を掘り起こして紹介しておく。

今回の事件は、
共犯者Aが被害者Xとの関係で逮捕勾留(延長)
⇒ 共犯者Aが被害者Yとの関係で逮捕勾留(延長)
⇒ 間を置いて依頼者BがXとの関係で逮捕勾留(延長)
⇒ 依頼者BがYとの関係で逮捕勾留
という末の、勾留期間延長事案である。

延長決定理由は、①証拠書類精査未了、②参考人取調未了、③被疑者取調未了とされた。
共犯者当時から通算すると、都合4周目の強制捜査で、まだ①②のような事情が残されているということは考えがたいのではないか、また、被疑者が包括的黙秘権を行使している現状、延長したところで被疑者供述が得られる期待は無いのであるからそれを理由に延長するのは不合理ではないか、というのが、当方の主張である。

さて準抗告審の延長決定理由。
「本件事案の性質・内容、被疑者の供述状況、原裁判時までの捜査の進捗等を踏まえると、本件について適正な終局処分を決するためには、参考人らから事情を聴取するほか、関係各証拠を精査し、その結果を踏まえて被疑者の取調べを行うなど、所要の捜査を遂げる必要がある」のだそうだ(名古屋地決2024年4月14日、平手健太郎裁判長他)。
多分、数十回以上は見ただろうというコピペ文章。
その汎用性には賛辞を送りたいが、内容には褒められるところがない(包括的黙秘権を行使している被疑者の取調べをしなければ適正な終局処分ができないってどういうこと?自分の頭で考えずコピペしている証左だと思う)。
これで手続の透明性が保たれる、反論の手がかりもばっちりである、等と本気で考えている裁判官がいるとしたら、空恐ろしいことである。

(弁護士 金岡)