本欄本年1月3日付けで、交通反則事件における「一件記録」閲覧について報告した。要するに、過失運転致傷罪の捜査と、同一の事実関係を前提とした交通反則事件とが同時並行で進行したため、交通反則事件における「一件記録」閲覧により、過失運転致傷罪の捜査弁護における防御活動が格段に進展したという流れである。
この事案は、事故当時の被害者が立位であったのか路上に横臥していたのかが争点になり得るものであったが、一件記録を閲覧できたため、確信を持って「事実認定」出来、当該認定事実を前提として過失論を展開し、それなりに具体性のある不起訴申入書を作成することが出来た。
結果、本年3月、不起訴処分になった。
不起訴処分を受けた返す刀で、交通反則事件の打ち切りを求めた。
刑事事件が(起訴猶予ではない)不起訴処分になったのであれば、最早、交通反則事件において過失責任に問うことは無理があるだろうし、合一確定の観点から不相当である、ということを強調した。
その結果、6月に「除外手続」なるものがされ、要するに注文通り、手続が打ち切られることになった(書面は出ないとのこと・・そういえば以前にも手続打ち切りを経験しているが、その時も電話一本で済まされた記憶である。想定される処分の重さに比して、実にいい加減な事件処理ではある。)。
捜査段階において一件記録が開示されれば、充実した捜査弁護が行え、無用な起訴を阻止できる。社会生活において不可欠というべき運転免許の得喪も、刑事事件の結論が出た後、その結論に合わせて行うべきと指摘できる。(そういえば最近、刑事事件で無罪になった事案が行政では有責判定されたとの報道があった。民事で結論が変わるならともかく~民事と刑事では過失の捉え方自体が異なるという裁判官の論文すらある~、同じく公法系の事件で(証拠関係共通である限り)結論がわかれるのは、制度不備では無かろうか。)
交通反則事件へも弁護人が介入することの重要性、事件処理の順番を違えさせないことの重要性、捜査段階における一件記録開示に(事案ごとであるとしても原則的に)弊害が見出せなかった事例の追加、といった、前向きな教訓を見出せた事例であった。
(弁護士 金岡)