本欄本年5月20日「弁護人席前のベンチを撤去させよう!」において、いつのまにか実務の最先端から置いてきぼりになっていることを痛感したところである。
心を入れ替え、可能な事案は手間を惜しまず、腰縄手錠解錠時期問題、身体拘束事件でのSBMを試みなければならない。
ということで(不幸にして身体拘束中の)早速2件で、試してみたが、何れも××である。

【その1 関和寛史裁判官の場合】
起訴後勾留中の事案で、勾留理由開示請求を行い、
・腰縄手錠配慮
・弁護人の隣への着席
を求めた。

開廷前、なにやら傍聴人に案内が流れていたので、「入廷時期操作」方式で配慮されたのかと思いきや、関和裁判官曰く「対応しません」とのこと。同裁判官曰く、接見禁止の事案なので、もともとそういう順番にしようとしていた、と(傍聴人と被告人とが交談する機会を可能な限りゼロにしたかったと言うことであろう)。
結果としては事なきを得ているのだから、もう少し違う言い方をする余地もあっただろうに(「結果的にそうなっているので今回は“検討しなかった”」とか)、平然と「配慮しません」と述べるところ、人権意識の希薄さを恥とすら思えない残念さである(日弁連の人権大会で、腰縄手錠が主題となる時代である。人権大会にゲストとしてお招きするのはどうだろうか。)。

こういう裁判官であるから、無論(?)隣への着席も「対応しません」という。
異議を申し立て、K地裁の「弁護人席前ベンチ撤廃」事例まで紹介したが(実名も出した)当然、異議は棄却された。なお、異議事由には、拘置所職員への意向聴取などの事実調べが行われていないという審理不尽も掲げたが、何ら是正されないまま手続が進んだ。
拘置所がどう言おうと関係ない、着席位置は自分が決める、という、傲慢さである。弊害が無いのに人権制約することは比例原則違反だが、そういう憲法感覚も無い。
次の異動先がK地裁であれば、お好みの位置に着席させるため私財を投じてでもベンチ復活を策謀されるのだろうなぁと嗤うしか無かった(そうしないなら、名古屋地裁でも同じように措置できるはずだ)。K地裁のためには、そういう異動はない方が良いが、当地からは早々にいなくなってどうぞ、というところである。

【その2 蛯原意裁判長の場合】
車椅子の被告人の事案である。
同じく、
・腰縄手錠配慮
・弁護人の隣への着席
を求めた。

隣への着席問題を念頭に置いた説示として、被告人の状態どうこうではなく、他の事件への波及を考えて配慮すべき特段の事情があるかないかの観点から検討するというような説明があって、配慮を拒否された。
異議を申し立てたが、公益の代表者たる検察官は「理由がない」と主張。
無論、異議棄却である。

そういえば往時、この問題に取り組み始めたころ、「他の事件への波及論」があったなぁとは思ったが(本欄の過去記事を漁ったが見つからなかった。他方で、一審強において名古屋地裁が個々の裁判官の訴訟指揮の問題として協議に応じなかった記事は見付けた。)、2019年とか2020年の話である。それから4~5年、(波を起こせなかった弁護士会にも問題はあろうが)ずっと横睨みで、「他所がやらないから、うちもやらない」を続けている裁判所には恐れ入る。そういう粘り強さは、もうちょっとこう、冤罪審理とかの違うところで発揮して欲しいものだ。
というよりも、K地裁が弁護人席前のベンチを撤去しているのだから、どうせ横睨みするならK地裁を横睨みすればいいものを、ダメな方に合わせて組織的人権侵害を恥と思わない。これでよくも「司法に対する国民の信頼」とか口にするなぁと思う。「人権よりも業界慣行を守ります!」をcatch phraseにすればよい。

(註)くだんのK地裁について、インターネットニュースで流れている法廷撮影を参照して、確かに弁護人前のベンチが無い法廷構造であることを確認出来た。そのうち、実名を挙げられるように思う。⇒(6月8日追記)本欄本年6月7日付け記事を参照されたい。

(弁護士 金岡)