テンプレ=template=「定型文」「ひな形」「決まった様式」。
保釈請求審の決定が定型文であることは夙に知られている(それでも近時、決定理由を書き込む工夫が一部裁判官において実践されているのは喜ばしいことである)。
今回取り上げるのは、請求審ではなく異議審において、テンプレ保釈裁判が行われていることの告発である。
もともと、身体拘束にかかる裁判において全く理由を書かない裁判例が量産されていることは、本欄で何度も指摘していることである。身体拘束にかかる裁判は迅速さが要求されるから、という口実なのかもしれないが、迅速さを優先して不当な身体拘束や、少なくとも上訴審における救済を妨害するが如き無内容の決定を量産することが許されるはずもなく、様々な手段で意識改革を求めていくしかない(社会問題とするもよし、国賠をするもよし、被害当事者の皆さんに声を上げて頂くもよし、である)。
しかし今回の発見は、構成裁判官が全員違うというのに、一言一句、同じ言い回しで異議審の理由が記載されている、というテンプレ保釈裁判、その言い方が悪ければコピペ裁判、というべきものである。
まず名古屋高決2024年7月22日(田邊三保子裁判長、細野高広裁判官、海瀬弘章裁判官)。【そこで検討すると、原決定は、・・などを踏まえても、なお裁量保釈が適当でないと判断し保釈請求を却下したと解されるところ、そのような原決定の判断は相当であり、当裁判所も是認できる】(※本決定はKI弁護士より御提供頂いた)
次に名古屋高決2024年7月26日(山田順子裁判長、石川真紀子裁判官、三橋泰友裁判官)。【そこで検討すると、原決定は、・・を踏まえても、なお裁量保釈が適当でないと判断し保釈請求を却下したと解されるところ、そのような原決定の判断は相当であり、当裁判所も是認できる】
違うのは唯一、「などを踏まえても」か「を踏まえても」かの違いであるが、これは弁護人の主張が複数個引用されているか、一個しか引用されていないかの違いなので、異議審の判断理由とは無関係の違いである。
結局この異議審らは、異議審の判断理由として「そのような原決定の判断は相当であり、当裁判所も是認できる」しか書いておらず、そこへの接続詞「・・を踏まえても、なお裁量保釈が適当でないと判断し保釈請求を却下したと解されるところ、」を加えて、完全に一言一句が同じなのである。
これらは何れも名古屋高裁刑事第2部の駄作(産廃)であるが、名古屋高裁刑事第2部御用達のテンプレートが用いられていることが明らかである。
というのも、夏期休廷がからむ特有の事情で、名古屋高裁刑事第2部の裁判官を使い果たしてしまった経過があり、7月26日決定の方の構成裁判官のうち2名(石川、三橋)は民事部から引っ張って来られているからである。
構成裁判官3名の顔ぶれに全く重複がなく、しかも、通常は刑事裁判に関わらない裁判官が2名も加わった7月26日決定までが、一言一句同じと言うことはつまり、これら裁判官は、決定文を書き上げるのに自分の頭を使っておらず、過去の決定データを使い回しコピペしていることの証左である。
同じ人物といえども、違うときに書けば、文章に多少の差は生じるものである。ましてや、3名とも違う裁判官、普段は刑事裁判官に関わらない裁判官が、多少なりとも心を込めて起案すれば、絶対に一言一句同じになることはない。
テンプレ裁判官、コピペ裁判官。
こんなものは、正直、要らない。ゴミならリサイクルしようもあるから、ゴミ以下だと思う。
(弁護士 金岡)