本欄本年9月13日付け「申立理由を改ざんする裁判所」で報じた、弁論再開を行わない決定に対する異議申立の公判調書記載について、弁論再開の必要性相当性を支える本質的な部分が全て削除されていた案件は、遂に国賠訴訟に発展した。

早い話が、調書異議を申し立てたが「理由がない」という、にべもない扱いを受けたので、他にやりようもなく国賠にしたということである。
申立理由を構成するのは、申立権を付与された弁護人=私の権利に他ならないのであり、裁判所が濫りに編集するのは不合理である。仮に善意に「要点を選り抜きました」ということであっても、判断する側が判断したい部分だけを選り抜く、あるいは判断したくない部分を排除する、という危険がつきまとうのだから、あってはならない筈だ。

なにより、手続調書でしか確認出来ない申立理由なのだから、今後の上告審において当該手続の違法を主張するとして、歴史的事実としての真実の申立理由をねじ曲げられ、しょぼい申立理由に改変された挙げ句、手続に瑕疵がないとなっては、もはや、私の申立権など骨抜きになってしまう。
調書異議を容れなかった図々しい態度(申し立てた方がおかしいといっているのだから素直に直せば良いものを、何と戦っているのだろうか)も踏まえると、最早、国賠に訴えるしか方法が無いと判断した次第である。

なお、歴史的事実としての真実の申立理由をどうやって証明するか?という問題はある。経験的に、裁判所は、紛糾している事案ほど意識的に法廷録音を廃棄している。かといってこちらが録音すると懲戒請求が飛んで来かねない。
一つ言えることは、こういう調書の改ざんを続けていると、ますます弁護側は、自衛策として法廷録音を敢行しなければならなくなる、ということだろう(その他にAIによる音声認識技術を活用することも考えられようが)。取調室での違法不当な取り調べを明るみに出すために、秘密録音が貢献したことは歴史的に知られている。裁判所の嘘は、やはり秘密録音によって暴かれなければならないのだろうか。裁判所もそこまで落ちぶれているのかと、法曹としては残念である。

(弁護士 金岡)