弁護人が依頼者から証拠物の提出を受ける。
ごく普通のことのように思われるが、捜査機関には「証拠隠滅」に映るらしい。
今回取り上げるのはそのような話題である。
捜査機関が在宅被疑者の勤務先に捜索押収に入る。
丁度、被疑者は外出中であり、弁護人つまり私に対応が求められた。
理想としては立ち会いに行くことだが(捜索押収時に立ち会ったことは何度もあるが、これはなかなか勉強になるので、機会があれば是非、実践して頂きたい)、生憎と公判があり動けそうもない。
聞くならく、押収したい被疑者の所持品があるようであり、こちらとして押収されることは吝かではないが、弁護人としても内容は記録保存しておきたいので、先んじて預かり内容を保全の上、弁護人から任意提出することにした。
弁護人が依頼者から証拠物を預かることはごく普通のことであり、それが押収対象となっていようといまいと関係はない。
しかし捜査機関はこのような遣り方を疎ましく思うようである。かつて名古屋地検半田支部の小川検察官(当時)は、このように弁護人で証拠物を預かることが罪証隠滅だとして、事務所に届けてくれた関係者を被疑者扱いしたし、今回は中村警察署の村松警察官が「証拠隠滅じゃないか」と言い出した。
こういった手前勝手な理屈に付き合う必要は全くないが、敢えて言わせてもらうなら、捜査機関が入手した証拠を隠して弁護人に開示しなかったり、いつのまにか保全データを消してしまう等の濫りに廃棄する事態が後を絶たない状況下では、捜査機関が証拠を収集すること自体が寧ろ(被疑者に有利方向の)証拠の隠滅じゃないのかと言いたくなる場合が幾らでもある。自分には甘く、弁護人の証拠収集を否定するような言説は馬鹿げており、御免被りたい。
ついでに。
取り調べ対策で依頼者をがっちり守っていたはずが、捜索押収に名を借りて事情聴取されたり、酷いときには押収物還付ついでに取調室に放り込まれたりという事態は、ままある。捜査弁護の落とし穴とでも言うべきところであり、気をつけたい。
弁護人の意識はまだまだ取り調べに向きがちであるが、捜索差押え等に関しても、十分、介入していく余地はあるし、そうすべきなのである。
(弁護士 金岡)