本欄で屡々、令状裁判が遅いということを話題にしている。
正確に言うと、拘束する方は24時間体制かもしれないが、釈放を求める裁判に対しては平然と残業を拒否して翌日に回すことが横行しており、これは意識の問題なのかもしれないし人数が足りないのかもしれない。
いずれにせよ、拘束する方を24時間体制でやれるなら、釈放を求める裁判に限って夕方以降は翌日に回すというのは理屈に叶っておらず、人手が足りないというなら増員すれば良いだけのことだと思う。
さて本題。
現在進行中の複数の事件で、検察官の証拠開示で事件が完全に止まっているものが複数ある。
例えばA事件は、検号証40ほどに対して130点ばかりの類型証拠開示請求を行ったものであるが(但し点数に対し中身の項目数は相当多い)、1か月で取り敢えずの開示がされたが、最終的に全部出揃うには4か月必要だと言われて止まったままである。
またB事件は、公訴事実が3つあり、役所が絡んだ経済事犯であるため証拠点数がそれなりに多いことは間違いないとして、6~7月に三度に分けて258点ばかりの類型証拠開示請求を行ったことに対し、「第2弾」への回答が一向にされず、「12月まで待って欲しい」ということでやはり止まりっぱなしである。
更にC事件、これも役所が絡んだ事案ではあるが、結審後に受任したこともあって先ずは重要な点に絞った数十点の証拠開示しかしていないのに、年内一杯、証拠開示待ちという事態である。
どれもこれも、類型的に思いつく証拠開示に数ヶ月、待たされるというのは、いかがなものだろうか、と思う。検察官も人数不足なのかもしれない。
しかし根本的には、「弁護人が、あるだろうと当たりを付けた証拠開示をして」検察官がその識別事項を自分なりに解釈して記録の中から探し出し、開示要件を検討して開示の可否を決定する、という、まだるっこしいことをやっているから、こういう事態が発生してしまう、ということは明らかであろう(警察保管で未送致の記録が沢山あり、そのため探し出す所で更に一悶着ということも、ままある)。
畏友、I弁護士は、これを「神経衰弱」と揶揄したが、弁護人のめくったカードと検察官のめくったカードが一致した場合にようやく開示されるというまだるっこしさは、なるほど神経衰弱といってもよいかもしれない。
捜査機関が、収集した証拠を漏れなく管理し、かつ、弁護人に全面開示すれば、このような無益な作業の大半は省略でき、刑事裁判は随分、速く進むだろう。
整理手続が長い長いと、裁判所は弁護人の方を向いて批判的であるが、整理手続の円滑な進行が阻害されている主たる理由は、証拠開示制度に無駄が多すぎるからである。
(弁護士 金岡)