長期化といっても、がっぷり四つ、という話ではない。
平たく言えば放置されている、と思っている。
2022年12月に無罪確定した案件(例の盛岡事件)で、2023年3月に費用補償を申し立て、1年越しの2024年3月に原決定が出され、内容に不服があるので即時抗告を行った、という案件であるが、記録が高裁に上がったのが6月、双方の意見が7月、当方の補充が8月ときて、まだ決定が出ない。
と思っていたら、裁判所から証拠調べをしたのでというお知らせが入った。
論点の1つは、本欄で過去にも取り上げている「打合せ期日が費用補償の対象となるか」であり、現に冤罪事件で弁護人に労力が発生しているのだから費用補償の対象になら無いはずもないのだが、この程度の論点で何ヶ月、待たせるのかと思う。
ともあれ裁判所の証拠調べは、この点について当方が、法テラスの国選事件でも打合せ期日は加算対象だと指摘したことに対し、御丁寧にも一月の期限を定めて法テラスに照会をかけており、この程、その確認が取れたというものである。
即時抗告という性質上、抗告期限が極めて短く、相手が東北地方だけに原決定の受領から即時抗告申立書の発信まで非常に神経を使わされる一方、裁判所のこの体たらくはどうだろうか。
原決定審からして、丸一年、かけている。
即時抗告審も、係属から起算すれば8か月以上が経過している。
費用補償は、冤罪事件における最低限度の償いであろうに、それを年度末の在庫整理宜しく1年もかけたり、大して複雑な論点があるわけでもないのに8か月もかけたり(記録が上がってこない高裁は迷惑なとばっちりだったのかもしれないが、裁判所という全体の中で責任を論じるべきだろう)、一体どういう感性かと思う。
他に急ぐべき事件もそりゃあるだろうが、冤罪事件における最低限度の償いは、最も急がれるべきものの1つなのではなかろうか、と思うに付け、「だから裁判所は」と溜息が出る。
(弁護士 金岡)