過去記事を検索すると、毎年のように「整理手続研修を数件、頼まれた」趣旨の記事を掲載している模様である(今年も9月に書いている)。これから春までに2件、引き受けており、その都度、レジュメの改訂作業や資料の差し替えなどを検討することになる。
実は、これから実施するうち1件の単位会が実に「10年ぶりの整理手続研修」ということで、10年前のレジュメを取り出して見たのだが、まず、分厚さが違う。当時で19頁(それでも2時間では割愛する部分もあった)、今や31頁・・倍増とは言わないまでも相当に増えている。
更に、中身も、勿論、違う。
例えばスマートフォンデータを巡る証拠開示や解析手法は、いまや整理手続研修で欠かせない話題であるが、10年前のレジュメでは姿形もない。時代の流れを感じる。
証言予定開示は、当時から活用を叫んでいたが、それから10年、いくつかの高裁判例、また、地裁決定例などが出て、考え方は定まり、いよいよ知らないでは済まされない領域に到達している。
我ながら興味深いのは計画審理についての考えの変化である。
10年前のレジュメは、「弾劾と言えども思わぬ証言が飛び出すのが常、審理計画には追加調査の余裕を持たせたい」「審理計画で押し切られない心構えが必要」として、連日的開廷は危険であることを前提とした内容で構成されていた。
しかし今では、この点は完全に改説している。現代のレジュメでは「一気にまとめて審理させる計画を主導することは時に不可欠」「一気呵成に進める方が結果的に楽」としている。
10年前は、まだまだ証拠開示やそれを補完する収集方法の方法論に蓄積が足りず、証言予定開示についても十分に活用できておらず、それ故に公判突入後にもなんやかんや不測の事態が起きうることを前提に論を進めていたが、今ではこのような弱点はかなり克服でき、それならば刑訴法の原則通り集中審理で進めても危険性は低く、逆に利点の方が遥かに大きいと感得するようになったのだろう。
今のレジュメの原型は2008年ころには作成しており、中には上記のような大幅な加筆、改説も含めもあるが、そのような歴史を振り返るのも一興である。
(弁護士 金岡)