控訴保釈中の依頼者の外泊許可申請(職権発動促し)を行った顛末である。
名古屋市在住の方だが、知人の裁判傍聴のために神戸市に二泊したいとの申請である。裁判員裁判の傍聴のため、朝から晩まで傍聴しようと思うと、名古屋市との日帰りは全く意味が無いから神戸市に連泊する、というのは至極普通の話である。
なにより、名古屋市と神戸市とを日帰りで3日、行き来する(これは保釈条件違反ではないから当然出来る)のと、二泊するのとで、出頭確保に支障を来す具体的蓋然性に変動はないのだから、これが許可されるのは当然だと思っていた。
検察官も「然るべく」意見であった。
・・のだが、なんと、名古屋高裁刑事第1部(杉山慎治裁判長)はこれを不許可とした。
この裁判官の横暴ぶりは、本欄で夙に報告しているとおりであり、本年1月22日で退官との情報も得ていたのだから、(旅程切迫の申立は宜しくないという常識的な配慮をかなぐり捨て)退官後に申し立てれば良かったと臍をかむも、正しく後の祭りである。
ともあれ、検察官も反対しない、日帰り往復が可能なのに連泊は認めないという、増上慢も甚だしい、奢り高ぶった、常軌を逸した判断を受けたわけである。
さて、これに対し司法救済があるか?だが、職権不発動の判断に対する不服申立を認めないのは最高裁判例があるから、高裁決定への異議申立は出来ない。
そうすると、原決定(つまり外泊を禁じた保釈許可決定)後の事情変更(職権発動による妥当な調整が図られない機能不全)により原決定が過剰に帰した、という構成で、原決定への抗告を行う他ない(それを認めたものとして、接見等禁止事案の最決2019年3月13日がある)。
と考えて抗告申立をしたが、名古屋高裁(刑事第2部)は、例え職権不発動を受けてもそのような抗告は不適法だと判断した(特別抗告中)。
思うに、外泊許可申請に対する司法判断が「100%正しい」という制度設計は有り得ないから、それが間違っている場合の事前救済手続が用意されていないことは、法の欠陥であると評価することになる。
法が欠陥品でないなら、上記のように抗告の適法性を認めて、実質審理を行うべきだった筈である。
職権不発動を経ても抗告を不適法とした名古屋高決を前提とすると、外泊不許可を争うための司法救済がないことになり、裁判を受ける権利の保障に悖ると考える。事後の国賠は、なにしろ裁判官相手の国賠になるから、例の、負託された権限の趣旨に背いて云々という判例法理を前提とする限り、機能しないことは明らかである。
増上慢も甚だしい、奢り高ぶった、常軌を逸した判断でも、二重三重に守り、およそ司法救済の機会すら与えないというこのような制度は、ダメな裁判官を益々つけあがらせるだけの制度的保障になっている、と言えよう。どんなに馬鹿げた職権不発動も、裁判で駄目出しされる余地がないのだから、平然と、反省することなく、量産出来るわけである。
ダメな裁判がなくならないわけである。
自身が有罪確定させた事件が、後に再審無罪となっても、検証報告1つ出さない最高裁は、差し詰めダメな裁判官養成の総本山だろうが、それでも特別抗告に期待をするしかないのが虚しい。
(弁護士 金岡)