約半年で整理手続研修を4~5件、こなしてきた。

ここ数年を含めて全国的な傾向として言えることが2つある。

1つは、証言予定要旨開示の活用がまだまだだ、ということである。
本欄でお馴染みの話題であるが、検察官証人の証言予定を具体的に知る保障が証言予定要旨開示の制度趣旨であり、これを活用することなくして、整理手続段階で「ケースセオリー」は完成しない。ケースセオリーが完成しないということは、反対尋問事項が完成しないということで、ということは必要な部品集めである類型証拠開示請求(を含む所要の証拠収集)が尽きているかどうかも分からない。
非常に単純な論理であるが、残念なことに「こんな詳しい証言予定要旨の開示を受けたことなどない」という感想を頂くことが非常に多い(というより、どこの研修でも必ず出る感想の1つである)。
これでは、成功が約束されていない場当たり的な反対尋問にしかならない。天恵により成功することもあるかもしれないが、それは名人芸でなければ偶然の所産に過ぎない。

いま1つは、「セレブライトリーダー」「UFEDデータ」といって「知ってます」という方が、会場に1人2人、という現象である。これもまた津々浦々に共通の現象と言える(受講者が控えめで、全員が名乗り出るわけではないとしても、結論に大差はあるまい)。
「携帯電話端末解析結果」の開示を受けたところで、それは、良くて、捜査官が任意に選択した項目の開示に過ぎない。弁護人が独自に、当該携帯電話端末に蔵置された記録を余すところなく引き出すには、UFEDデータの開示を受けてセレブライトリーダーで自ら解析する能力が必要である。勿論、セレブライトリーダーの解析能力は非常に高く、手作業で丸一日を費やしても出来ないことを、数分でやってのける、ということは、弄ってみたことがあれば実感出来るだろう。

証言予定要旨開示にせよ、UFEDデータにせよ、尋問に発展する事案で、その活用無くして計画的な弁護は覚束ないことは断言出来る。

(弁護士 金岡)