裁判員裁判を中心に、専門家証人と事前に尋問準備に向けた面談を行うことを「カンファレンス」と総称しているが、当初議論されていたような裁判所が何かしら関与するものではなく、純然たる証人テスト(厳密には、反対尋問側には法定された証人テストの根拠はないが)として機能していると思われる。
カンファレンスという位置付けだと、反対尋問側も証人との事前面談が取り付けやすいという点で全く意味がないわけではない。
さて、この程の経験であるが、検察側証人が、事前のカンファレンスでは「Aという説明はすごく分かりやすい」「全然起きても不思議ではない」と述べていたにもかかわらず、公判では一転して「私はAには否定的」「解剖学的に有り得ない」と証言した、という事態に遭遇した。カンファレンスでの発言と違うのではないか?と水を向けられても「そんなやりとりをした記憶がない」とまで証言した。
幸いにも、カンファレンスの録音記録があったので、これを反訳して証拠請求し、無事に採用された(検察側は反対したが、恥を知るべきだと思う)のではあるが・・録音がなかったら「中立専門医に偽証動機はない」とか言って水掛け論に持ち込まれた可能性もある(参考までに、件の証人は、SBS=揺さぶられっ子症候群に関する刑事事件に関し検察側で意見を述べておられる井原哲医師である)。
おそろしい話である。
こういう話を書くと、「録音されるなら面談を拒否する」という証人が登場するかも知れない(因みに検察官は、再主尋問で無断録音では無いか?と証人に水を向けたが、それは証人が否定した)。
しかし、先日3月1日の本欄記事もそうであるが、この種のことは常に事後検証を可能にしておくべきである。余り考えたくはないが、カンファレンスでは敢えて適当にお茶を濁して公判では全然、違う証言で不意打ちしてくる「御用医者」がいることにも備えておく必要がある。
録音記録を残すことを宣言して(そういえば取調べ録録に拒否権はない)カンファレンスに臨むのが良い。
(弁護士 金岡)