こんな人権救済勧告が出ているよと教えて頂いたものである。
日弁連2025年3月6日付け。
勧告の結論部分は、京都府警察本部長に対し、「今後は、憲法及び国際人権(自由権)規約の各条項を遵守して適正に捜索・差押えを実施し、明らかに差押えの必要性が認められない物を差押えの対象物とする捜索差押許可状の発付を裁判官に請求せず、また、これを押収することのないよう勧告する。」というものである。
全文は以下から読める。
https://www.nichibenren.or.jp/document/complaint/year/2025/250306.html
京都市内で発生した宗教団体信徒らによる、第三者利用口座開設(詐欺)事案に関して、京都府警が、当該宗教団体の全国の関連施設(大阪、北海道等)まで捜索する令状を請求し、また、別の宗教団体との同一性を明らかにする教義関係資料まで捜索する令状を請求したことが、やり過ぎだという勧告であり、その内容に異論は無い。
問題は、京都府警察本部長にだけ?という点であり、そこで全文を読むと、京都府警察本部長の他、国家公安委員会委員長、警察庁長官、京都地裁所長に対しても勧告するよう申立があったものの、前二者は具体的関与がない、京都地裁所長に対しては裁判官の独立及び具体的関与がないことの二点から、勧告を見送ったことが分かる。
申立人が、令状裁判官その人を勧告の名宛人に加えなかった理由は分からないが、勧告の名宛人にあげられていない以上、日弁連が職権で勝手に名宛人に加えるわけもにいかないのだろうから、申立内容を踏まえるとやむを得ない結論なのかも知れない。
しかし、それにしても、上記のような令状裁判を平然と行った裁判所に全くもの申せないというのは如何なものだろうか。
全文からは、上記令状裁判に対し準抗告が申し立てられたのか、その帰結がどうであったのかは分からないのだが、何かしら裁判所に駄目出ししない限り、京都府警察本部長からすれば「裁判所が許可した令状になんの文句があるのか」くらいにしか受け取らないだろう。その結果、警察が反省することはないだろうし、何ももの申されていない裁判所もまた反省しないから、結局、同じことが量産されるだけである。
せめて、このような人権救済勧告を行ったことを、関連団体として、当の裁判所、裁判官にも送付して、その認識を改め、自主的に申立人に謝罪するよう促すくらいはできるのではなかろうか。
(弁護士 金岡)