本欄2022年3月10日「DVD謄写4条件を考える」にて、他所から御提供頂いた名古屋高決(人数分の謄写は認めるが、更なる複写やオンライン接続機器での再生は認めない趣旨のもの)を紹介した。
「古くさい、しきたりを踏襲しているだけで、思考停止の類い」というのが私の意見であり、大方の弁護士(のみならず、現場の検察官なども)はその意見を支持するだろうと思っているが、この程、関東方面から、人数分の謄写すら拒否されているので裁定請求をしたいと、上記名古屋高決の提供を求められたという出来事があった。

私が判例雑誌等への投稿に関心を向けないため、本欄にしか収録されていない情報というのも一定数あると思われ、目ざとく本欄の情報を把握して提供を求めてくるというのはなかなか俊敏である。
で、御提供したところ、検察官から「人数分の謄写に応じるので裁定は取り下げて欲しい」旨の打診があったという。
はなから自分の頭で考えれば、謄写枚数を全員で1枚に制限することがどういう問題を孕むか、分かりそうなもので、故に「思考停止」というのである。上から言われて書式を使い回していては、なんの進歩も無く、その仕事は決して良いものにならないだろう。

ともかくも、未だに「全員で1枚」を振りかざす検察官がおり、それに対し裁定請求をしようか考える弁護人がおり、その際に援用できる決定例を探しあぐねる、という状況にある、ということは分かったわけだが・・「刑事デジタル化法案」が出てきている現状、座視していると、どのような馬鹿げた手枷足枷をかけられるか分かったものではないな、と思うところである。
一度決まると思考停止して改善を拒む風潮の国柄、日弁連の責任が重大だと思う。

現場目線では、例の4条件はほぼ形骸化していると言って差し支えないと思うが、昨年の公判で、検察官がiPadデータを法廷で上映していたとき、セレブライトリーダーが当該データの緯度経度を地図上に図示していたから、あれはオンラインのパソコンに違いないと思ってみていたことも付け加えておこう。
検察官はウェブに繋ぎ放題、弁護人はダメ、そんな馬鹿げた話があるだろうか。

(弁護士 金岡)