最近の事例から、弁護人の証拠収集妨害についての話題である。

【1】検察にうんざり

深夜の目撃見通しが争点となり得る事案である。
控訴審から受任した。
最終的には目撃内容の争いであり、防犯カメラ映像の開示が重要である。深夜の見通しが問題となることも勘案すると、そのものずばりでなくとも、周囲の暗さなどが映っているだけでも有意である。
原審弁護人は、尋問日程を入れつつ周辺の防犯カメラ映像の開示を検察官に求め、裁判所は未送致記録も確認するよう検察官に指示したが、その約束は有耶無耶のまま尋問に進み、有罪。

控訴審でこちらから検察官に、原審での約束が未履行であることを指摘し、未送致記録の確認結果、証拠開示を求めると・・「任意に開示すべき証拠はない」。
は?日本語しゃべれます?という腹立たしい思いで、「約束通り未送致記録の確認もしたのか」と重ねて問うと・・「証拠の存否を含めて回答しない」。

証拠の改ざんや証拠隠しなどの数々の不正の上に数々の冤罪を引き起こしながら、検察庁は未だに、まともにゴメンなさいも言えない体質である(関西某県の某県知事も真っ青であろう傲岸不遜ぶりである)。
証拠は検察の私物ではないのだと子どものころに教わりませんでしたか・・?と言いたくなるが、これが現代日本の(名古屋)高等検察庁(田原秀範検察官)の仕事である。「税金泥棒」というと怠惰な役人のことだが、怠惰だけならともかく積極的に妨害してくれる役人を税金で養う価値は全くなかろう。
なお、この検察官は、原審で取り調べられた夜間見通しに関する写真が明るく補正されている疑いを指摘され、写真データの開示を請求していることに関しても、(原審で未開示の写真をわざわざ印刷して開示した上で)データの開示には応じない、という徹底ぶりである。

控訴趣意書提出はこれからであるが、せめて裁判所が最低限の仕事をしてくれなければ、裁判にならない。良識のある対応が期待できないなら、がちがちに制度で縛るしかないのであるが、情けないの一言に尽き、うんざりである。

【2】弁護士会にもうんざり

これまた控訴審から受任した案件である。
依頼者の買い物履歴を調べる必要があり、商品を特定して、販売店にPOSレジ記録を調べてもらうべく弁護士会照会を申し立てると・・調査室(愛知県弁護士会の場合、調査室という機関で弁護士会照会を審査する)担当から、膨大な履歴調査を要求すると照会先に過負担になる可能性があるという指摘が入り、照会先に調査可能か問い合わせるよう指示された。

今日日、POSレジシステムからデータ検索して回答するなど、捜査関係事項照会だろうと23条照会だろうと普通に経験しているので、今更こんな意味不明な指摘はないだろうと反論すると(照会先は名の知れた量販店である)、今度は問題をすり替え、「先方が過剰な回答をすると、弁護士会の方で匿名処理するのが大変だ」という。

「マスキング作業が弁護士会に負担だから弁護活動上、必要な23条照会を通さない」。
こういう馬鹿げたことをいう調査室員など、お払い箱にすべきだろう。
検察庁が「事務官のマスキングが大変だから全体として不開示にします」と言い出したら、許せるだろうか?それがおかしいと思うなら、弁護士会の負担どうのという言説もおかしいと、子どもでも分かるだろうに。

こういう意味不明な調査室対応で照会手続が10日も遅れた。
控訴審は時間との闘いであり、10日も止められたことが今後、どのように災いするか、分かったものではない(弁護士会からは詫びの1つも無い)。
例の処置請求事件を経験して、弁護士会もまた身内の論理に傾きがちな、恃むに足りない組織であることはよくよく理解していたが、結局そんなもんなんだなと、うんざりしている。

(弁護士 金岡)