本年3月31日、愛知県弁護士会内で腰縄手錠問題の会内勉強会が開催された。
大阪、広島、愛知(ひょっとすると他にもあるかもしれないが)で単位会の決議もされており、時宜を得たものであると思う。
私は事例報告を担当したが(腰縄手錠問題だけだと飽きが来るかと思ったので、関連問題として、おなじみSBMも取り上げた)、それにつけても思うことは、「いつまで私が事例報告をやらなければならないのか」ということである。
SBMであれば、高野隆先生と共著で論文を出させて頂いたのが2007年の冬(季刊刑事弁護52号)である。かれこれ17年も前のことだ。腰縄手錠問題も、大阪の動きに追随して2019年から取り組んで、成否いずれも事例を積み重ねてきた。
「特定の弁護士でないと出来ない」という問題では全くなく、要は、やってみようと思うかどうかが殆ど全ての取り組みであるから、他にも実践する人が沢山いれば、わざわざ旧態依然たる私の報告頼みになるということはないはずなのである。
それが、相も変わらず、私に御指名が来る・・この問題の、弁護士層の動きの鈍さを象徴しているようである。
会場参加の73期の若手弁護士から、腰縄手錠問題の申立をしてみたという報告があったことは、せめてもの幸いであった。裁判所に完全に無視されて異議申立でまごついたという、気の毒な顛末ではあったが、次からはもっと上手くやれるはずだ。
とにかく、多数の実践が必要である。腰縄手錠問題もSBMも、最早「誰が聞いても、現状はおかしい」と思う水準の人権課題である。(そういえば先日、待ち時間に傍聴した法廷で、身体拘束されていない被告人が弁護人席の前のベンチにつくねんとしていたのを見たが、本能的に有り得ない、くらいに異常な光景だと感じた)
取り組まない方がどうかしていると言って良いだろう。
例えば、裁判所が午後一杯、50分刻みの単独事件の新件を4件、入れているとして、4件ともで、腰縄手錠問題やSBMの申立が飛び交い、異議が飛び交い、数十分の遅延が生じる・・そういう光景を過渡期的に経験すれば、裁判所も堪え、肌身で感じるだろう。繰り返しになるが、まず弁護士層の意識改革からである。
(弁護士 金岡)