病院からカルテを入手することは、医療事件は勿論、交通事件、刑事事件等の幅広い分野で多く経験する。
カルテの謄写には、当然、相応の手数料がかかるのであるが、病院間で相当にばらつきがあり、外部利用者からは不便この上なく、不便なだけならまだしも、しばしば高額請求にうんざりとさせられる。
先日のA病院では「コピー代の他に一律300円」と言われた。またB病院では、電子カルテ収録ROMの複写は500円と言われた。病院からすれば本来的な業務ではないカルテの謄写に手間を割く手数料と言われればA病院の対応も理解不能ではない(但し、病院はカルテ開示義務を負うのだから、本来的業務の範疇にあることを忘れてほしくはない)し、今日日ROM1枚はごくごく廉価であるも、いちいちROMに焼く手間賃を請求するというのもまぁ、理解不能とは言わない。
しかし、某大手C病院は一律5000円を上乗せしてくる。理由を問うたところ、「医師が決済するから診断書料と同じものを徴収する」というのであるが、およそ理解しかねる。またつい先日は、D病院から「3240円」を上乗せ請求された。やはり、診断書料と勘違いしている気がする。
孫引きになり恐縮であるが、聞くところでは、「診療情報の提供等に関する指針の策定について」(平成15年9月12日医政発第0912001号医政局長通知)において、患者等の自由な申立てを阻害しない見地から、「手数料を徴収する場合は、実費を勘案して合理的であると認められる範囲内」であるべきことが明確にされているという。また、読売新聞の報道には、高額請求事例として5000円、3000円を請求する病院が散見されたことが報告されているという。
数枚のカルテのために3000円なり5000円なりと言われれば、「やめておこうかな・・・」となるだろう。これが自由な申立ての阻害以外の何物でもないことは、明らかである。
かくして、私は、(請求時点で上位枠組みを明示し)不当な請求には応じないと回答しているのであるが、膠着状態に陥っているものが複数ある。高額請求を仕掛ける病院が「手数料先払い」を主張しだした日には、世直しのため、裁判所に「実費を勘案して合理的であると認められる範囲内」を決めて貰うための裁判でも起こすしかなくなるのだろうか。
(弁護士 金岡)