何かの研修の資料で配付されたものを改めて読んでみたところ、要諦ではあるがきめ細やかに行き届いたガイドラインであった(ウェブ上で検索すると仮訳を読める)。
その中で自戒させられたのは、「10.3 仕事量に関する弁護人の義務」である。
曰く、「死刑事件において弁護をする弁護人は,本ガイドラインにしたがい質の高い弁護を依頼者人に提供するために必要な程度に,その事件量を制限するものとする。」
死刑事件を筆頭に、重大で困難を伴う事件は、勢い、労苦に報いるだけの経済的利益は見込めず、かといって事案によりけりではあるが世間から弁護人ぐるみで批判されることも多く、依頼者との付き合いも容易でなかったりと、何重苦であるため、引き受ける弁護人は限られる(勿論、相応以上の力量も必要である)。
そのような弁護人には、その手のものを含む敬遠されがちな事件があちらこちらから持ち込まれ、ただでさえ手間のかかる事件が複数になる。敬遠されがちであり、他の受け皿が見つかりづらいことを十分に理解しているから、断るのも心苦しい。ある種の人格者ともなれば弁護士会の仕事も多く・・・加えて、経済生活が成り立つだけの事件も引き受け、処理していかなければならない。
かくして、仕事量は悲惨な状態になる。
しかし、このような事態は、どの依頼者にも迷惑をかけかねず、宜しくない。
前記ABAのガイドラインは、それを喝破している。
心意気や自己犠牲の精神だけではどうにもならない。その見極めを学ぶ必要がある。
(弁護士 金岡)