(前註:当HPは特定の政治的立場に立つものではなく、政治色を出すことも敢えて避けているものではあるが、立憲主義や憲法自体が侵されようという動きに対して、法律家として発言することは躊躇わない)

報道等によれば、自民党が偏向教育調査を開始したという。

http://lite-ra.com/2016/07/post-2401.html

朝日新聞の報道や、上記ウェブ記事が詳しいが、なんと「戦場に子どもを送るな」と教育の場で教えることが、政治的な偏向だという。 政権与党が「偏向」という場合、反対勢力に向けられた取締であることは見え透いている。少なくとも、そのことを警戒しなければならない。 憲法13条、21条、26条に悖ると言わなければならないし、戦場に子どもを送ることに反対できない立場を(公務員含む)教員に強要するなら、憲法14条にも反すると言うほかない。

そこで取り急ぎ、自民党の調査フォームに下記の投稿をしたところである。

https://ssl.jimin.jp/m/school_education_survey2016 (文面は、批判を受けて改訂されている。当初文面は、上記ウェブ記事に保存されており、まさに袈裟の下から鎧、という感である。)

(弁護士 金岡)

 

(貼り付け)

貴党の調査の趣旨は、政治的中立性を逸脱し、偏向した教育実態を調査するためと謳われておりますが、貴党がこれまで、自身に心地よい報道には異議を差し挟まず、自身に反対する立場の報道に対しては偏りがある等と批判し、放送法に基づく放送禁止まで持ち出して抑止しようと躍起となってきた経過等に照らすと、「偏向」は、貴党に反する立場のみを指すものと考えざるを得ず、思想統制を試みるものであると理解せざるを得ません。

少なくとも、教育現場の方々は、貴党に批判的な立場に言及するだけで「偏向」との誹りを受けかねないことを懸念し、貴党に翼賛的な発言に終始し、その結果、自由な思想市場の萎縮、教育の退廃が懸念されるところです。卑しくも政権与党の立場からは、この調査のように圧力を受け止められかねない行動は慎むべきであり、この調査は、憲法13条、21条、26条(子どもに、貴党に翼賛的な教育を受けさせることは、親の教育権を侵害するものです)に反することから、直ちに中止して下さい。

おって、朝日新聞報道によれば、当初の調査の趣旨は、「『子供たちを戦場に送るな』と主張する教師は偏向しているから通報せよ」というものであり、これが批判を受けるや「『安保法制に反対』と主張する教師は偏向しているから通報せよ」というものに変更され、更に、現在のように変更されたと言うことです。 これが事実であれば、まさに上記で指摘したとおり、貴党の違憲の安保政策、集団的自衛権に批判的な教育を取り締まる趣旨に出たものと理解せざるを得ません。貴党はおそらくは、「アベノミクスは成果を上げている」と評価する教育は取り締まらないでしょう。このような思想統制は、断じて許容されません。