ここのところ、2件、代理人を辞任した。今年に入ってから、別に2件、辞任した案件があるので、なんとなく多い気がする。基本的には依頼者の不払い・・というより音信不通や状況の変化によることが多く、こちらは被害者的に考えているのだが、中には「信頼関係が維持できない」という、価値観の分かれる辞任理由もある。

【例1】「これこれがうまくいかないのは、やることをやっていないのではないか」「ほかの弁護士で、ぱっとやれている人がいると聞いている」という趣旨の怒りをぶつけられる場合。

→ 説明を尽くしても納得が得られず(不審があれば説明も素直に受け入れて貰えまい)、不審が残っている状態であれば、こちらもやりづらいし、依頼者も、余所の弁護士を探した方が結果に納得できるだろう。理非がどちらにあるにせよ、不審が残り、信頼関係が動揺したなら、早々と辞任する方が賢明であり、許される、と考えているがどうであろうか。

【例2】「賠償しなければ告訴を検討する」という内容証明を送ったところ、「賠償義務はないと考えている」という回答が来た。この場合に、依頼者から再度「告訴する」と書くように要求された場合。

→ 告訴告訴と重ねることは脅迫まがいである、と考える。そうであれば、相手の意思が明確にされた以上、告訴告訴と重ねることは許されまい。依頼者がどうしてもといっても曲げて従う理由はなく、しかし依頼者が譲らないなら、信頼関係が維持できないという他ないだろう。

辞任が続くと、流石にこういうことも考えてみるのだが、他の弁護士の対処も知りたいものだと思う(辞任し時というのは、倫理研修では議論されないような気がする)。粘り強く理解を求めて、なんとかやっていく道を選ぶのだろうか(国選だとそうせざるを得ないわけだが)。それとも、ぎこちなくなったあたりで見切りを付けようとするだろうか。
投げ出すというと聞こえは悪いが、傷が広がり、事件処理に支障が生じる前に、再度軌道に乗せる方がまさる、と思う。

(弁護士 金岡)