まがりなりにも消費者事件を扱う弁護士として、言わずにはおられない。
競馬、パチンコの「公営ギャンブル」が、生活を持ち崩したり、離婚原因となったりする現象は今も昔もある。自己責任というのは簡単だが、誘惑をばらまく張本人が言うべきことではない。誘惑し、お金を使わせ、差額が儲けになるから、公営ギャンブルが存在するのであり、ということは必然的に、損をする人がいる。儲けようと手を出した人が損をさせられるのだから、取り返そうと更にお金をつぎ込む層が一定数、発生するのは当然である。かくして不幸が生産される。

「カジノ解禁」は、少なくとも現時点において、「偶然の勝敗によって財物その他財産上の利益の得喪を争うこと」に他ならないから、賭博奨励である。すごろく禁止令を持ち出す必要があるかはともかく、違法である。
その違法を解禁する上で、どれほどの議論を積み重ねたとも思われない(国会議事録検索でいちいち、拾い出すしかないのだろうか)。少なくとも、上記のような不幸が生産されないような手立てを(できるものなら)確立してからのことではないだろうか。依存症の治療方法があるとか、社会で取り組むべきだとか、自民党は言うようだが、そもそも発生させないに優ることがあるのだろうか。
仮に見るべき経済効果があるとしても、賭け金を巻き上げられ、不幸が拡大生産されていく事例が少しでもあるなら、それを選択することは正気の沙汰とは思われない。

なお、朝日新聞報道によれば、党内が割れた某与党の議員に、賛成理由を問われ、「共産党なんかと一緒に座って反対する選択はそもそもなかった」と答えた、佐藤茂樹という方がおられるようだ。
差別意識をもてる程度の頭はあるのかも知れないが、自分で考えることのできる程度の頭はお持ちでないようだ。こんな議員に政治を預ける選択はそもそもない、と言いたいものだ。

(弁護士 金岡)

平成28年12月9日 追記

http://blogos.com/article/201262/

この件では、民進党のブログ記事が大変に良かったのでここに紹介したい。

公営ギャンブルという賭博を解禁することが、賭博罪との関係で厳格に審議されなければならないところ、まるで厳格さがなく、後日の個別立法に丸投げという実態が良く分かった。とりあえず合法にしておいて、あとはなし崩し、というのは、9条の解釈改憲と同じ手口であろう。勢いで押し切ってなし崩しという手法を繰り返す政権が依然として高支持率というのは、誠に度し難い。内容に同調するとしても、手口に反発するのが、知性であり理性ではないのだろうか。