当事務所では、在留資格の取得に関わる案件もそれなりの依頼数がある。行政手続、行政訴訟と言うことで、普通には学んでこない領域の法律を扱う必要があり、また、対国家的な案件であるため敬遠されがちなのだろうと思われるが、取り扱う弁護士は限られている感がある。
弁護士の介入が手薄である場合、入管が明確に上位に立ち、依頼者層は相当、劣位である。弁護士が介入せずとも行政書士が介入する場合はあるが、管見する限り、相当下手に出ておられるように伺え、対等にぶつかろうという行政書士は少数との印象である。
勢い、この種の案件では、良く分からない仕来りが幅をきかせる。行政訴訟になると国側から必ず言われるのは、「法律が細かな取り決めをしていないのは、行政側に幅広い裁量を認める趣旨である」という理屈だが、果たしてそうだろうか。劣位にある側が、なかなか声を上げることも叶わず、生殺与奪の権を握る入管側にへいこらとして、法改正需要も上がってこないというのが真相ではなかろうか。
平成27年の夏に受任した案件で、このほどようやく在留特別許可が出た(日本人配偶者(夫婦のみ)、永住資格あり、不法就労助長の軽過失事案)。
上記のようなことを改めて思ったのは、その事件処理経過がどうにも怠慢の極みと思われたからで、半年くらい資料を補充し続けた上、判断を待つこと半年、音沙汰がないので判断を督促しつつ状況説明を求めるも無視、その後、半年して、更に判断を督促しつつ状況説明を求めるも無視、足かけ1年半以上が経過して漸く、在留特別許可に至ったというものである(こういう事案は一件のみではないし、抗議文を出しても基本、無視であることも付け加えておこう)。
判断のため動きがあるのかないのか、順番待ちなのかどうかも不明なまま、説明もないまま1年以上も放置されても、なにしろ手続的な取り決めが全くないので事実上の文句しか言えず、国相手となると処分拒否と見なして訴えに及ぶことが生産的とも思えず、かくして、弁護士が介入してすら、依然、劣位におかれる(屈従、という感がある)。
よほど目に余る事案で、依頼者に失うものがなければ別であるが(類型は異なるが、この手の国賠案件が複数、係属しているところではある)、そうでもなければ現状を打破する方法もなく、その傍若無人ぶりに嘆息してばかりである。標準処理期間を定め、これを超える場合は説明義務を課すとか、手続的な枠が必要と思うが、市井の一弁護士には遠く高い壁である。
(弁護士 金岡)