折角なので、先日の準抗告認容決定を取り上げよう(堀内満、小野寺健太、堀田康介の3名からなる合議体)。
同決定は、原決定と異なり3号事由は否定したが、2号事由は肯定した。その上で、以下のように述べて勾留の必要性要件を否定した。
(以下、引用)
そこで、勾留の必要性についてみると・・罪体について罪証隠滅のおそれが大きいとはいえない。また、常習性の点についても弁護人提出の資料等によつて常習性がある程度明らかになつており、罪証隠滅の余地は大きくない。
そして、被疑者には、通院治療中の精神疾患があり、排せつを含む日常生活について配偶者の援助を必要とする状態にある。そうすると、勾留によつて、治療が中断し、配偶者による日常的な援助が受けられなくなり、被疑者に著しい不利益が生じることは否定し難い。
本件について、勾留の必要を認めた原裁判は、不合理といわざるを得ない。
(引用、終わり)
「おそれが大きいとはいえない」「余地は大きくない」罪証隠滅で2号事由を肯定していることは、平成26年11月17日の最高裁決定の悪い影響だろう。また、勾留の必要性要件を否定した決め手は被疑者の要援助状態にあると読めるが、この種の不利益を取り込むことには、おそらく、裁量保釈事由を明文化した刑訴法改正の影響があると思われる。現在においては一つの標準的な形に読める。
しかし、このように、2号3号を広く肯定しつつ、なんでもかんでも勾留の必要性要件に放り込むことには賛同しかねる。上記程度でも原則勾留であり、特別の事情がなければ釈放しないと読めてしまうし、「著しい不利益」がない程度に健康であれば同じような事案でも無意味に勾留されかねない。健康状態を優先して差し支えない程度の阻止すべき罪証隠滅であるなら、勾留を正当化するほどではないから2号事由に欠ける、とする方が筋が通り、かつ、裁判所の裁量を手続保障的に制約できる仕組みだと考える。
現状、現実には、裁量保釈事由的な勾留の必要性要件の争い方を選択せざるを得ないし、本件でも弁護人提出資料が相当に加味されているとは言え、本丸の2号・3号が弛緩しないよう主張を尽くすことこそ肝要であろう。
(弁護士 金岡)