乗ったタクシーの中で偶々、国会中継を聞いた。議事録を読むことは多いが、中継を見る機会はそうない。

話題の森友学園について、首相が答弁していたのだが、記憶によれば「首相夫人が、学園での講演で色々と発言しているのだから、そのことを首相夫人から聞かされていたのではないか」という質問に対し、質問の趣旨が理解しづらいことをくどくどと指摘した上で、挙げ句、「自分は夫人にこう話した」という、全く筋違いの回答をしていた。
法廷であれば、途中で尋問者が発言を制止し、そうでなくても裁判長がじれて遮ること請け合いの光景だったが(なお、公平に言えば、質問者の尋問は、個別具体的に手短に質問するという大原則から逸脱しており、下手だった)、そういうこともなし。少なくとも法廷では、回答が得られるまで同じ質問を繰り返すし、それにより見込み時間を逸脱したとしても咎められることはないが、そういうこともなく、結局、質問の意図は達せられないままにぐだぐだと終わったのには呆れた。
日ごろから精緻な尋問を準備し、周到に展開を予測し、必ず尋問の狙いを達成して終えるということが当たり前の身からすると、(一部だけを切り取るのは、それこそどこぞの首相のお得意技であり不公平ではあろうが)幼稚園の学芸会の方がまだ緊張感があると感じられた。

さて本題。
共謀罪について、質問者が法務大臣に対し「一般人には共謀罪が及ばないと言うことだが、組織の構成員が犯罪を準備し、一般人を勧誘した場合、共謀罪が適用されるのではないか」と糺した。
実に正鵠を射た指摘であり(本欄本年4月16日付けにて、「勿論、準備行為を実際に行わなくても共謀していれば罪に問うことができ、而して共謀は内心領域の問題であるから、外からは分からない。」と指摘している)、回答やいかにと固唾をのんだが、「早口で聞き取れなかったのでもう一度・・」と回答され、制限時間を気にした質問者は質問を打ち切ってしまい、拍子抜けであった。
法案6条の2柱書を読む限り、組織的犯罪集団の団体の活動として組織により行われることの共謀が実行行為になるから、これは特定の身分がなければ成立しないというものではなく、無論、そのような身分を有しないの共同正犯も可能であるとしか読めない。そのことを明らかにする格好の機会が、幼稚園以下の学芸会で時間切れに持ち込まれたというのは実に残念であった(いずれどこかで同じ質問から続けて欲しい)。

(弁護士 金岡)