接見等禁止決定は、とりあえず包括的に付される。
もし、「家族と外部交通したい」等の要望があれば、手っ取り早いのは、その範囲で接見等禁止決定を変更させることである。
方法としては、一部解除の職権発動を求めるか、例外を増やすよう原決定の変更を求める準抗告を申し立てるかになる。
一時期、名古屋地裁の特定の裁判体は、このような場合は一部解除の職権発動を求めるべきであり、いきなり準抗告を申し立てるのは本来的ではないという判断を繰り返していた(とはいえ、準抗告却下までは踏み込んで来ず、文句を言いつつ準抗告に対する判断を行っていたと承知しているが)。
勿論、このような裁判体は例外的であるし、理論的な根拠もあるようには見受けられず、余り取り合う必要も無いだろう。
それはそれとして、2つの方法の何れが勝るのか。
準抗告を選ぶ利点は複数、考えられる。
1.仮に棄却されるにせよ決定理由が明示されることから次に繋がる。
2.不服があれば特別抗告が可能。
3.刑事部合議体での判断になる。
上記3点目は、結局のところ人を得るかどうかなので、明確に利点と断じられるかは微妙であるが、まぁ利点な方ではないかと思われる。1点目2点目は、手続保障があり、手続保障があるなりに慎重な判断が行われると期待できるから、はっきり利点だろう。
これに対し、敢えて職権発動を選ぶ利点は、パッと思いつかない。強いていうなら、
4.「刑訴法81条違反とは断じがたいが、しかし当不当でいえば不当かな」という場合に裁量的な解除が可能になる(これに対し準抗告だと、理論的には、「なお原決定の裁量の範囲内」で片付けられるように思われる)ことくらいか。しかし、現実問題として、そのような計らいを経験したことがないので、利点とは言えまい。
また、
5.職権発動の促しは原決定後の事情を掲げられるが、準抗告審ではそうはいかない(例えば原決定段階では判明していなかった、事件と無関係の重要な関係者について外部交通を求める場合~考慮できなかった原決定審に非は無いが、今や結果的に誤っていると主張する場合)、ということも挙げうるが、裁判実務において、準抗告審は原決定後の事情も取り込んで判断することになっているので、利点にはならない。
と、このようなことを考えたのは、この7月8月と、続けて、「職権発動は蹴られたが同旨の準抗告が認容された」からである。
もともと、手続保障のない職権発動の方法を好まなかったが、昨年、前記裁判体が上記のようなことを言い出したため、外れ籤を引いて面倒ごとになるのも困るし、ひょっとすると前記利点(とは言えない程度の利点)のようなことを考えているのかも知れないと思い、数度、職権発動から入ることを試していた。
その結果、十分な数ではないものの、寧ろ準抗告の方が通りやすいのでは?という方向に傾かざるを得ない結論が出ている(前記7月8月分だけで結論したわけではない)。
以上のように考えれば、もはや結論は明らかになっているというべきだろう。
(弁護士 金岡)