尋問調書作成の話題。
少なくとも名古屋地裁の場合、民事裁判では業者の録反が主流だが、刑事裁判ではそこそこ速記官による速記録が行われている。どういう理由から違いが生じているのかは分からないが、意識して速記官を重用しているのであれば歓迎したい。
業者の録反は、可能な限り法廷証言の臨場感を残すという意味においては、一段も二段も劣ると言わざるを得ないからだ。
相当以前から速記官の養成は停止されていると聞く。弁護士会が反対声明を出したりしているが、改善はされていまい。
さて本題。
裁判員裁判では、口頭主義が徹底され、目で見て耳で聞き、記憶に新しいうちに判決に至るので、のんびり尋問調書を待って起案するなどということは許されない。かといって記憶には限界があるから、多額の予算をかけて自動反訳が開発され、検察官や弁護人も自動反訳データを貰い、これを参照しながら起案をすることになる。
しかし、その精度は全く褒められたものではない(グーグルクロムの音声認識の方が精度が高いのでは?と思うほど)。固有名詞や方言は「ずたぼろ」。語尾不明瞭であると更にぼろぼろである。以前から指摘されているはずだが、改善はされていないのだろうか。 いわゆる自白事件なら、まだこれでもなんとかなるとして、否認事件で、中間的に意見陳述や重要な証拠採否が予定されている案件ともなると、全く頂けない事態に陥る。裁判員の都合は結構だが、正しい資料に基づく、精度の高い起案を提出することを劣後させるのはどうかと思う。最も優先されるのが被告人であるという余りに当然のことが徹底されていないという感を強くする。
反訳:「はい、強調ですけれども、拘留中に、広告に関する著作を出しております。」
正解:「はい、共著ですけれども、勾留準抗告に関する著作を出しております。」
速記官養成の再開と復権を強く求めたい。
(弁護士 金岡)