本欄平成29年7月2日「一部解除の職権発動を求めるか、準抗告か」で、接見等禁止の例外を増やす場合を念頭に何れの手段が勝るかを検討したことがある。準抗告を選ばない理由がない、と言う結論であった。

さて近時、「月刊弁護士ドットコム」(弁護士ドットコム自体には、広告媒体としての議論として言いたいことが多々あり、私は相当批判的な立場であるが、「月刊~」は無料配布されてくるので目は通す)の記事で、「条件を付しにくいから、一部解除は職権発動でやってほしいと裁判所は考えているのでは」という指摘を目にした(「ある弁護士が書いたブログだと・・」という前振りがあり、論旨を見るにどうやら本欄平成29年7月2日を踏まえたもののようだ 。
その記事では、「父母に限って1回だけ」という局面が当落線上の案件だったようで、なるほど「1回だけ」解除となると、「父母に限って解除」より更に例外的条件の問題となり、最早、準抗告審では扱えまい(「父母に限って解除」なら準抗告審で扱えることは実証されている)。

実務上、「1回だけ」解除という局面は余り遭遇しないので議論の念頭に置かなかったが、特殊な用務や、「お試し」で土俵に乗せることは確かにある。そして、このような極めて例外的条件の問題では準抗告審では扱いかねる(理屈の問題として、1回だけ解除しなかった原決定は違法だという主文はどうにも書けそうにもない)だろうから、一部解除によらざるを得なかろう。
ということで、前回記事の補足として、この議論を取り上げた次第である。

それにしても、業界人でもごく少数しか読まないような論文媒体に頼らずとも、あちこちで目にされる形で議論を公表できるというのは、便利な時代になったものだと思う。刑事が中心というわけでもない弁護士や、地裁所長殿の目にもとまる(訴訟指揮から、この裁判官は本欄を読んでいるのだろうなぁと感じたこともある)。依頼者からも「最近更新がなくて心配した」と指摘される。かくして議論が磨かれ、全体が前進するなら、書く甲斐があるというものだ。

(弁護士 金岡)