電子機器を巡る接見国賠は依然として一進一退が続いているようだ。
平成29年12月には、大阪高裁で、要旨「ノートパソコンの持ち込みを禁じるには刑事施設の規律および秩序を害する結果を生ずる具体的なおそれがあると認められることが必要」と明確に述べ、これを禁じた刑事施設長の違法を断じる判決が出されている。
かと思うと、この4月には、広島地裁で、目を疑うような判決が出ている。刑事施設が通知に基づき行っている電磁的記録再生装置の持ち込み規制として、証拠物もしくは証拠物としての提出を検討しているかどうかを申告させ、これ以外の場合は「内容を簡単に」申告させ、弁護活動に必要不可欠かどうかと言う観点から許可するかどうか判断する、というものがあるが、この判決曰く、このような持ち込み規制は、接見秘密を覚知させるものではなく、また、秘密交通権と捜査権・刑罰権との合理的調整として許される、などというのである(龍見昇裁判長)。
弁護活動に必要不可欠かどうかと言う観点からの審査に耐えるほど内容を申告させておいて接見秘密を害しないもへったくれもないと思うのだが、それと同時に、この裁判体は果たして本気で、刑事施設が弁護活動に必要不可欠かどうかを判断する能力を持っていると思っているのだろうか?更に、弁護活動に必要不可欠なもの行為以外は接見室で行うことを制約されてもやむを得ないと、本気で思っているのだろうか??かつては憲法や刑事訴訟法を学んだはずの彼/彼女らが、どれだけ歪んだ成長を遂げるとここまでおかしな考えを持つようになるのか、想像するのも難しい。
ちなみに、この規制について、私が原告となった国賠訴訟(名古屋地判平成28年2月16日)では、満足行く水準では無いにしても、「記録媒体の内容申告」を求めるもので秘密交通権を侵害すると、明確に述べていた。
この名古屋地判から、大阪高判へと、進んでいたかと思うと、広島地判のようなものが登場する。正しく一進一退である。
(弁護士 金岡)