本年8月28日ころに報道されたことであるが、名古屋拘置所に収容されていた死刑確定者(俗に言う死刑囚)が、別事件の被疑者として弁護士との接見を求めたことに対し、名古屋拘置所が、秘密接見を認めず職員を立ち会わせたのは違法として、名古屋地裁が国側に賠償を命じた判決が出されている。この接見に赴いた弁護士が、私ともう1名であり、弁護人2名と死刑確定者に、それぞれ1回あたり3万円の賠償が命じられている。

争点は、専ら、死刑確定者が「別事件の被疑者」であったかである。妨害された我々の接見(平成23年4月~7月)の前後、平成22年12月や平成23年7月に、警察官や検察官が別事件での取り調べを実施し(ようとし)た事実があり、事件の全体像の中で主犯的な疑いをかけられていたこともあり、さほど難解な事案とも言えない。現に国側は、控訴しなかった。

刑事弁護を生業としている以上、捜査機関や刑事施設と抜きがたい対立状態に陥るのはやむを得ない。公権力による実力行使が行われれば、その場では押し切られることはやむを得ず、主たる対抗策は事後的な国家賠償請求等の訴訟になろう。慎重にではあるが果断に打って出ることは、いわば、世直しである。平成25年12月には再審請求を準備する弁護士にも原則的に秘密交通と認めるべきとの最高裁判決が出されるなど、文字通り、弁護士の身を挺した訴訟が公権力を規律する規範を作ってきたことは明らかである。

私自身、上記事件を含め(数え方にもよるが)3件の国賠事件の当事者となっており、このような歴史を承継したいと思う。

(金岡)