本欄でも度々、取り上げているが、土日祝日にかかる時期の裁判所との遣り取りは、時に極めて切実になる。近時の一例は、(ある意味で若干の失敗談でもあるが、)裁判所と検察庁が機敏に対応し、憲法上の権利が全うされた例として報告されて良かろうと思い、紹介する。
事案は、金曜夜の勾留決定である。
この場合に勾留状を入手しようと思う場合、「ファクスして貰う」「時間外受付に出しておいて貰う」のどちらかしかない。
今回は、どちらの要望も伝え損ねたため(ここが失敗談)、土曜日に入り、はたと、勾留状を入手する方法に困る事態に陥った。
所定の方法で裁判所から連絡を貰い(こちらから直電できない制度的欠陥は一向に改善されない)、「日曜日に取りに行くので時間外受付に」と要望したところ、「原本がないので謄本が作れない」という対応をされた(この回答は、理論的にはともかく実務的には誤りだと分かっているが、とりあえず、ここでは触れない)。裁判所は「検察庁で見てきて欲しい」という御提案。しかし、そんな制度はないので、こちらからは「写しで良いから交付して欲しい」と交渉。なんやかんやで検察庁も加わり、「留置先→検察庁→裁判所」と勾留状原本をファクスして回し、ようやく日曜、時間外受付で「写し」交付を受けることができた(「写し」受領書も提出した)。
制度上、勾留状の「写し」交付請求権があるのか?というとお察しなのだが、実務に目を向けると、例えば被疑者国選では、裁判所が法テラスに勾留状の写しをファクスし、それが更に弁護人にファクスされており、写し交付の実務が定着している、と理解される。前記「ファクスして貰う」方法論も、同根の理解が可能である。
速やかに被疑事実を正確に把握することは、不可欠の要請であり、それに資する限り、このような写し交付は憲法上の要請に適うのだから、今回の裁判所、検察庁の対応は、憲法に忠実なものであったと評価することができる。前記法テラス絡みを思えば、例外的にのみ写し交付するという狭い取扱いには、少々違和感があり、限られた時間を的確に振り向ける上でも、更に柔軟に、憲法的対応を求めたい。
(弁護士 金岡)