10年ちょっと前に「来日」し、その後、全国各地で繰り返し開催されている弁護士向けの研修に「法廷弁護技術研修」がある。実践的な事件教材をもとに、冒頭陳述から弁論まで2~3日かけて、時には同じ課題を何度も繰り返し、基本的な型から現場対応力まで修得することを身につけるものである。
私と「法廷弁護技術研修」との関係は、少々因縁めいたところがあり、ここ10年ばかり、やる方も受ける方も御無沙汰だったが、多摩支部から著名講師陣と御一緒させて頂く機会を頂いたので講師として2日間、参加した。

今回は反対尋問に特化し、(講師陣は批判し合わないという不文律などどこ吹く風で)別の講師の実演に異議を出したり、おそらく相当異色な研修になったのではなかろうか、と思う(そうでもなければ参加しようという食指が動かないのは事実だ)。そして、「いかに聞くべきか」ではなく「なにを聞くべきか」(但し、この分類には個人的には賛成できない。「いかに聞くべきか」から「なにを聞くべきか(聞くべきでないか)」が導かれることもあり、表裏一体である。)の研修は、まだまだ大きくは進歩していないことも理解した。

ところで、今から5年ほど前、頼まれた研修用に「反対尋問」レジュメを作成した時、最も意識したのは、「なにを聞くべきか」を導き出す発想の方法だった。この発想が、実は、整理手続段階での証拠開示の手厚さにも影響する。最終弁論と反対尋問、反対尋問と整理手続が、一連一体に結びつくことを知ると、自ずと、反対尋問の内容は定まり、そこに「いかに聞くべきか」の技術を足すことで、反対尋問の面白さ、奥深さが分かる。
企画段階では無謀にも思えた今回の研修も、ここに軸足を置き、伝えたいことを言ったり見せたりできたので、少なくとも今後の実務で試そうと思えるだけの刺激は残せたのではなかろうか、と思われる。勿論、自分が理由も無く型を崩したりしていないか、という確認も出来、幾つか新しい着想も得たので、得るものもあった。こういう研修がもっと増えると良いと思う。

(弁護士 金岡)