本欄本年1月13日で紹介した「憲法についていま私が考えること(日本ペンクラブ編)」の前身的位置付けである「憲法を考える本」を読んでいる。というより、買うしかないと判断したので、読んでいた、というべきか。美濃部の「憲法講話」も新しく出たことで、読むべき本は増える一方。

読みかけではあるが、例えば長谷部氏の論考で、「多くの人々が、憲法のより根本にある考え方に沿って、天皇を日本の象徴と考えなくなれば、問題自体が消失する」(540頁)として、基本的人権の保障と象徴天皇制が矛盾衝突すると喝破されている点は、我が意を得たりと思った。

また、憲法9条を巡っては、松田道雄と加藤周一が、揃って、憲法制定後、10年と経たず、政治が変節したことを指摘していることが興味深かった。
特に加藤周一は、「しかしもちろんこれによりわが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないのである。」とする砂川事件最高裁判決において最高裁長官であった田中耕太郎が、憲法制定議会において文部大臣として、「不正義の戦争を仕掛けてきた場合において、これに対して抵抗しない」ことの当否について、抵抗すべきでないとする立場から「剣をもって立つものは剣にて滅ぶ、という千古の真理について、我々は確信を抱く」「戦争放棄(は)不正義を認容する意味をもっていないと思う」と発言していたことを引いて、「千古どころか、10年もちこたえる真理もなさそうな気配だ」と皮肉っている。
砂川事件最高裁判決が、「千古の真理」に反することが良く分かった。

(弁護士 金岡)