尋問実施直前に検察側証人の話が大きく変わる。
あってはならないことだが、どうしても人間(証人も人間だし、準備する検察官も人間だから、完璧は期しがたい)のことだからしょうがない。
問題は、こうなった場合、きちんと反対尋問権が保障されるのかということになる。
例の盛岡事件は、まさにそういうところで生起した騒動であった。
さて、あと数日で警察官の尋問実施、というところで、検察官から「被告人を怪しいと認識した前提となる職務質問の時期が一月、遡ります。よろしく。」というファクスが届いた。「よろしく」もなにもないだろうと、尋問の先送りを意見し、無事、尋問が先送りされた。「A月B日」の職務質問実施を念頭に、その日の警察活動記録まで開示を詰めたというのに、それが「C月D日」実施に変われば、そちらの警察活動記録は未確認のままになる。そんな状況で尋問を進めることが不可能であることは、誰の目にも明らかであろう。
・・・と思ったら、なんと検察官は、尋問先送りの必要性は無いという御意見だったそうである。恐ろしい感覚である。勿論、時期が一月、遡ることについての証言予定も提出されていない。
反対尋問技術を追求していると、こと、警察官尋問で活動直後のおおもととなる記録を固めずして尋問に入ることなど禁忌(弁護過誤)だという感覚なのだが、その感覚が法曹三者で共有されていないのは不可解である。くだんの検察官の意見(本音なのか建て前なのかはさておき)、盛岡事件の裁判官の強硬な訴訟指揮(、ついでに処置事件の少数派一味の対応)を見ていると、根本から反対尋問が理解されていないのかなと不安になる。
(弁護士 金岡)