キッチンタイマー裁判官こと鈴木芳胤判事の話題を出したので、続きで、同判事による被告人に対する身体検査の顛末を紹介しておきたい。
ことの起こりは、「判決日だけは被告人の身体検査をするので協力を」と要請されたことである。協力する理由は無いので謹んでお断りしたまま、手続は進んだ。
１．そうすると、なんと、「判決公判では弁護士及び検察官を除く全員に入廷時の身体検査を行う」という法廷警察権が行使された。
実に分かりやすい権力の濫用である。
被告人が素直に身体検査に協力していれば、傍聴人ら全員への入廷検査など話題に上りようもなかったことが明らかだ。被告人を屈服させるために全員への入廷検査を打ち出し、仰々しく１０名からの職員を動員して法廷への道を封鎖するという恐ろしさ。
どういう人間に権力を持たせたら駄目か、ということが実に良く分かる。
２．勿論、この遣り口に対し、かなりの議論になった。
なぜ傍聴人の身体検査をするのか？という疑問に対し、鈴木判事曰く、「傍聴人の中には険しい顔をして被告人を見ている方もいた」と。つまり、傍聴人から被告人を守る配慮があると言うことか？と問うと、「その通り」と。
それならば、なんで判決当日だけそれをやるのか。判決内容次第で、それまでおとなしかった傍聴人が被告人に襲いかかるという事態がこれまでにあったのだろうか。
取り合うまでもなく馬鹿馬鹿しい御説明である。
３．更に、なぜ被告人の身体検査をするのか？も無論、問うた。
その答えは、「保釈中で、有罪無罪が争われているから」だった。つまり、有罪無罪を争っている被告人は、凶器を持ち込み凶行に及ぶ可能性があると考えているのかと尋ねると、これまた「その通り」とのこと。
この裁判官には、冤罪を主張する被告人が、逆恨みして殴りかかってくる人格のようにしか思えないのだろう。最早、寒々しい程である。
４．その結果、依頼者は、身体検査を受ける羽目になった。
後学のために検査場に入り込んで観察してきたのだが、女性の検査員に対し、後ろ向きに大の字に立たされ、股間まで金属探知機をはわされる扱いであった。
せいぜい空港の搭乗口くらいかと思っていたが、悪い方に予想を裏切る屈辱的な姿勢、及び、性別を考えるとセクハラも入っているなという状況である。
５．相弁護人が、懸命に、鈴木判事に対し、法廷警察権に基づく決定を文書化するように要求したが、鈴木判事は、「この程度は文書化するまでもない」という。
屈辱的な姿勢を取らせ、私的領域に侵入する手続が「この程度」であるという認識を示し、加害者側が「までもない」と片付けるという。その了見には驚かされる。
身体検査の強制処分性は刑訴法では有名な論点であり、常に、人権侵害や適正手続違反が隣り合わせになる、慎重な取り扱いを要する問題の筈である。鈴木判事に違法収集証拠排除の裁判を審理させることは、是非とも避けねばならない（というか、そういう了見ならば裁判に関わって頂かない方が良いだろう）。
６．最後に、上記相弁護人が食い下がる間に、携帯を取りだしてメールを確認していたところ、「どうせ録音しているんでしょう」と、こう宣われた。
まあ、そう疑われる私の不徳の致すところではあるが・・人を見ると凶行に及ぶと思うお方は、人を見ると盗撮や録音をすると思うお方でもあろう。さもありなんというか、実にさもしい発想ではあった。
７．おまけ。判決後、依頼者と１時間ほど打ち合わせてから岐阜地裁を出ようとすると、ぞろぞろと裁判所職員複数名が付きまとってくる。
察するに、「逆恨みされて火を付けられても困るから確実に施設外に出たことを確認するように」とでも、くだんの裁判官に指示をされていたのだろう。まあ、流石に同程度に低次元の発想に身を落とすことは難しいので、当たっているかどうかは分からない。
（弁護士 金岡）
