上訴保釈時に原審の保釈金を円滑に流用するために。

名古屋地裁の説明に曰く。
1.遅延損害金が発生しないよう出来るだけ早く還付手続に入る。
2.控訴保釈の可能性がゼロでない場合は判決後直ちに伝えておいて欲しい。
3.保釈申立書に流用の言及があれば直ちに庁内で伝達する。
とのこと。

ことの起こりは、無罪主張の事件で午前10時20分に実刑判決の宣告終了、午後0時30分過ぎに控訴保釈を申し立てたが、その後に保釈許可が出たときには「還付手続は終わっているので流用できない」と告げられたことである。
担当書記官に事情を聞くと、「午後1時くらいには手続が終わっていたはずである。」という。しかしそれなら申立の方が先んじているわけで、なんでまた還付されたのか・・と疑問になる。それを指摘した途端、担当書記官は「お昼、正午前には還付手続は終了していた」と話を変えた。

そんなこんなで、依頼者が釈放されるのが遅れた事態を重く見て調査を要求したところ、冒頭の通りの説明に至ったわけである。
本件保釈申立書には「●万円の上積みが相当」と書いたので、ごくごく常識的な裁判所職員であれば「残りは流用だな」と思うはずであり、午後0時30分過ぎの段階で「残りは流用だな」と思うはずの裁判所職員が担当諸器官に一報を入れていれば(前記3項)午後1時くらいに還付手続が終わる前に還付手続は止められたはずである。つまるところ裁判所組織としての過誤があったと言う他ない。
もっとも、当方も、「控訴保釈出しますんで」と告げるとか、申立書に「残りは流用するから還付は止めてね」と分かりやすく書くことは出来たから、裁判所だけを責めるつもりは毛頭無い。

なお、調査要求には、担当書記官の説明の変遷も含めていたが、この点については、所長の使者からお詫びを頂いた。
誰しも保身のために咄嗟に嘘をつくことはある。書記官であっても同じと言うことだ。

(弁護士 金岡)