昨日付け本欄「下には下が・・」に関連して、打ち合わせ期日の性質について、考えているところを述べておきたい。
打ち合わせ期日は、刑訴規則上に根拠規定があるに過ぎない。刑訴規則178条の2以下の僅かな条文だけが手掛かりとなるが、こと出頭問題については、枝番15において「裁判所は、適当と認めるときは、第一回の公判期日前に、検察官及び弁護人を出頭させた上、・・打合せを行なうことができる。」とあるだけである。
この条文を字義通りに読むと、
・裁判所は、弁護人と検察官に出頭を命じることが出来る。
・弁護人と検察官に、出頭権は保障されていない。
(但し、弁護人と検察官が揃わないと、手続は出来ない)
・裁判所は、被告人に出頭を命じることは出来ない。
・被告人に、出頭権は保障されていない。
ということになりかねない。
しかし、このような解釈によれば、弁護人が打ち合わせ期日を応諾することは、その他の手続即ち公判期日や整理手続期日における被告人の出頭権の保障に照らすと、手続出頭権を放棄するという意思表示を伴うことになり、弁護人として軽々に応じられる性質の手続ではなくなってしまうし、他の手続で出頭権を保障しておきながら、打ち合わせ期日では出頭権を保障しなくて良いとするだけの合理的区別も困難であり、当を得ない。
また、弁護人や検察官に出頭権が保障されていないというのもおかしな話であるから、総じて、前時代的な不出来な規定であり、解釈に於いて補わざるを得ない。
解釈に於いて補うなら、弁護人と検察官の出頭権は「当たり前」なのであるが、こと弁護人の権限は全て被告人の防御権に由来する(弁護権に由来する)のだから、大本の被告人の出頭権もまた「当たり前」であろう。少なくとも、最も利害関係のある被告人が出頭を希望したときに、特段の不都合がなければ出頭を妨げないことが、憲法、刑訴法に照らし、「当たり前」である。
もし、打ち合わせ期日が、被告人の手続出頭権の放棄を意味するなら、弁護人は、打ち合わせ期日は全件拒否する覚悟で臨む必要があるだろう。
保障された権利を個別事案毎に行使する・しないを決められるなら良し、そうではなく打ち合わせ期日では手続出頭権はありませんよというのは全く話が違う。そのように危険な手続に応じるべきではないからである。
(弁護士 金岡)