これも無論、実話であるが、諸事情により匿名記事とする。
周知の通り、裁判員裁判では刺激証拠の取扱いが問題となる。国賠に発展したこともあり、(後述の通り、おかしいのは制度の方だが、現実問題として)裁判所がそれなりの注意義務を負い得る情勢には違いない。

相対的に評価して強めの刺激証拠について、解剖医に証言時に示すものと裁判体に示すものとを分ける(後者を白黒の小さいものにする)という裁判所の提案について、ものによっては相当、すったもんだした(そもそも手続法的にはおかしな話で、そのようなおかしな話を強いる時点で制度の方がおかしい)(解剖医も「白黒では分かりづらい」と明言した局面もある)のだが、本題ではないので割愛する。

問題は、その提案について協議するため、刺激証拠を裁判体(裁判官3名)が事実上、確認しようという時に、ひとり協議の輪から遠ざかる裁判官がいた、ということである。裁判官2名が、「それ」を見に法壇から降りてきた時にも、ひとり降りてこず、降りてきた裁判官側から「●●さんは来なくて良いよ」と声をかけてもらう始末。その手のものが相当苦手だという説明であった。

幾ら何でも職責に対する自覚が欠けているだろう。
依頼者も腹立たしい面持ちのようだったし、弁護人としても全く同感である。
かといって、強めの刺激証拠を無理矢理に見せるわけにもいかないかもしれない。
そうすると解決策は、その事件の担当から外れて頂くしかないのだろう。その動議に着手する前に別の珍事が巻き起こり、全ては有耶無耶になってしまったが。

(弁護士 金岡)