被害者多数の事件で数名が起訴された上、更に追起訴が有り得るとして、検察官から被告人の取調べの要請があった(保釈中)。
総論が共通なので起訴後取調べの実質があるでしょ?と指摘すると、検察官も起訴後取調べと考えているとのことである。
起訴後取調べは、被告人の対等当事者性が厳格に保障されなければならないと解され、その意味するところは単純化すれば公判における被告人質問に準じた環境が必要なはずである。なにせ、既に公判が係属しているなら被告人質問という質問機会があるのであり、それより被告人に不利益な質問の場が強制される謂われはないはずだからである。

ということで、検察官に対し、被告人の対等当事者性を厳格に保障する方法をどう考えるかと指摘したところ、「当事者であることを説明した上で録音録画」だという。捜査段階ですら、弁護人選任権や黙秘権を告知した上で録音録画が普通だが、それを対等当事者性の厳格な保障と考える者はいないだろうことを考えると、なんたる浅はかさかと呆れた。
第1回前後で区別する考えもあろうものの、福岡地裁2003年6月24日判決(判例時報1845号158頁)が「弁護人の援助を受ける権利を与えることなく作成された」起訴後取調べにかかる検察官調書を違法なものとして証拠排除している例もあり、そんな違法不当な取調べに加担することは出来ないと反発し、取調べはお流れになった。

検察官が、当事者対等ということを全く理解していないことがよくわかる一幕だった。

(弁護士 金岡)