愛知県弁護士会の会長が「不自由展問題」について出した声明に対し、名古屋市長直々の抗議文が届いたようだ。
(声明全文)
https://www.aiben.jp/opinion-statement/news/2019/09/post-29.html
声明中、「河村市長の発言と行動は、行政庁の長である市長が企画展の展示物である表現の内容に対して異議を唱え出品者の表現行為を止めようとするものであり、憲法21条2項との関係において適切さを欠くものである」と批判されたことに反応したものだろうが、その内容たるや、曰く憲法21条と関連づけて批判すること自体が不適切であるとか、「健全な社会通念に照らし、大多数の名古屋市民の市民感情に受け入れられるものとは到底思われず、多くの日本人の心を傷つけることは自明ですので、そのような作品の展示自体が、国際芸術祭を楽しみに愛知県美術館を訪れた人々にとっては、ハラスメント」であるとか、もう無茶苦茶な内容としか言えない代物である。
河村氏個人として抗議されるならまだしも(それでも多数の名を借りて表現の自由を差別し排除しようとする残念さは全く否定できない)、これを「名古屋市長」の肩書き付きでやるところに浅ましさ(おぞましさ)を感じる。市長が「大多数の社会通念」「大多数の市民感情」なるものを盾に取り人権侵害を正当化しようとする、というのは、その立場を弁えないにも程があり、少なく言っても憲法の否定である。このような市長を戴かざるを得ないことこそ良い恥さらしである。
(弁護士 金岡)