現代人文社「ケース研究 責任能力が問題となった裁判員裁判」を紹介する。
11月20日ころ、店頭に出回るそうだ。

帯は「精神科医と弁護士による異なる視点から分析」である。その通り、無罪事例を中心に責任能力が問題となった裁判員裁判10件を取り上げ、担当弁護士による弁護活動報告・他の弁護士による批評・精神科医による論稿を三つ組みで掲載した構成を取る。
私は、10件中3件に、批評を掲載して頂いた(掲載に値する自分の担当事例が無いのは残念な限りだが、国選をやらないと責任能力を争う裁判員裁判は余り経験する機会もなかろう)。

本書は、責任能力を争った経験に乏しい弁護士には、担当弁護士の報告が参考になるだろう(傍目八目と言うから、その巧拙を知る上でも批評も併せて参照頂きたい)。
ある程度経験がある弁護士には、精神科医の論稿の方が興味深かろう。判決や弁護活動そのものを対象とした精神科医側の論稿10通を読める機会は、そうないと思う。

一点、残念な点を挙げると、企画段階から結構な時間が経過したため(主筆である日弁連刑弁センターと関係ない私にはどうしようもないことだが)、50条鑑定の在り方について「全く刑事裁判の実情を理解していない」分析を披露した、平成30年司法研究(「裁判員裁判において公判準備に困難を来した事件に関する実証的研究」)刊行後の出版であるのに、各原稿が同司法研究に対応していないことであろうか(少なくとも私は刊行後の担当原稿の改訂はしていない)。
同司法研究が「全く刑事裁判の実情を理解していない」ことについては、既に弁護士側から批判的論稿が幾つか出されているが、この分野に対応しては、同じく現代人文社の「責任能力弁護の手引き」“改訂版”の、私の担当原稿でも言及した。・・肝心の改訂版の刊行がいつになるのかは、前叙の事情で私には分からないことである。

ついでに。
「準抗告事例99」が第4版となるとの知らせもあった。
刊行から間もなく2年が経過するが、有り難いことである。

(弁護士 金岡)