現代人文社から標記の本が刊行されている。
福岡県弁護士会編。副題は「弁護士たちの挑戦」。
ここ10年以上、「初動」特に「捜査の初動」の在り方に拘ってきた身としては如何にも関心を惹かれるし、発祥の地、福岡のこと、熱い理念を感じ取れるに違いないと思い、読んでみた。
第1部「当番弁護士制度の誕生とその成果」
収録されたパネルディスカッションが良い内容だった。
原動力が「素朴な正義感」「納得のいかなさ」(上田國廣弁護士)。至当であろう。
第2部「被疑者弁護の現状と課題」
岡田悦典教授の小論が収録されていた。
丁度、氏の「被疑者弁護権の研究」を読んだところで、これが2000年より前の議論状況に基づくものだったので、「続き」を読めた、という格好になる。欧州人権裁判所が、2008年に、「公平な裁判を受ける権利」の「実際的かつ効果的」な存在要件として「警察による最初の尋問の時から弁護士へのアクセスが必要」と判示し、EU指令2013年が「警察によって取調べを受ける前に、弁護士とアクセする権利を有する」としていること等は活かしたいと感じた。
第3部「・・刑事手続の変化」
目玉は60期台前半の弁護士による座談会なのだろうけど、率直に、人選にも内容にも首を傾げざるを得ないものだった。強いて言えば、歴史が承継されておらず、危険だという感想。確かに私が研修を行う時も、「被疑者国選前の世代」「被疑者国選後の世代」の別を意識してはいるが、これほどまでの世代格差があるとなると、先達が多大な労苦を払い獲得確立してきた弁護権に有り難みを感じ守り抜こうという意識は、ただでは育たず、弁護士会が意識的に涵養していかなければならないのだろうと感じるには十分な内容だった、とは言える。
(弁護士 金岡)