本欄2017年8月2日で、例えば家族だけといった特定人との関係だけでも接見等禁止決定を解除させるに当たり、職権発動の促しか準抗告か、の理論的検討を行い、準抗告の方が勝ると結論付けた(現に準抗告審で一部解除(正確には一部取消か)決定が出ている案件を複数紹介もした)。
接見等禁止決定を解除方向で差し戻した最三小2019年3月13日決定も、予備的ではあるが一部解除が抗告趣旨に入れられており、原審でも実体判断を経ていると思われるし、最高裁判所も、「A医師」についての接見等禁止決定事由を特に個別に検討しているから、かかる一部解除の準抗告を適法視していると予想出来る。
他方、かの高橋徹(元)裁判長をはじめ、ごく少数の裁判体で、一部解除は職権発動の促しでしか行えない、との意味の分からない見解に固執しているという実態もあるにはある。
「その他大勢との関係での接見等禁止決定は適法かも知れないが、親兄弟との接見等禁止決定だけは違法だから、原決定の一部は誤りだ」という係争を、職権発動を促す形でしか行えないと考える理由が分からない。部分的にせよ違法なら、その部分に限った不服を申し立てる権利があることは当然であり、否定する理屈を思いつく方が難しい。
ごく新しめのものに絞っても、例えば名古屋地決2018年8月6日は、「よって、本件準抗告は、被告人とその父母との間の接見を禁止した部分の取消しを求める限度で理由がある」として一部解除の準抗告を認容しているし、前記最決のこともあり、前記意味の分からない見解が絶えるのも時間の問題だろうと思っていた(最近、一人減ったことだし)のだが・・・本日報告のあった名古屋地裁2020年1月24日決定(神田大助裁判長、西澤恵理裁判官、庄司真人裁判官)は、全文、次の通りであった。
「本件準抗告の趣旨は、原裁判を変更し、被疑者の妻を禁止除外対象とするとの決定を求めるというものである。しかし、かかる申立ては、接見等禁止の一部解除の申立てによるべきであり、本件準抗告には理由がない。」
裁判官の独立と、裁判官の独善は違う。特定人との関係で接見等禁止事由がないのではないか、と主張されているのに、「それはどうでもいい」として接見等禁止を全体として維持するというのは、まともな神経ではないだろう。このような裁判官の、この世に存在する意義を疑わざるを得ない。
勿論、たまたま今週の準抗告当番が外れだった、では済まない。
先週は職権発動と準抗告と2回、判断が受けられたけど、今週は職権発動の1回だけだから我慢してね、と言われて、はいそうですか、とはならないだろう。駆逐できるまで、折れず、やるしかない。
(弁護士 金岡)