ばたばたと期日が取り消されていく状況を前に、とある弁護士が漏らした一言だが、至言である。最高裁も複数の期日を取り消したと言うが、緊急事態宣言を受け、名古屋地裁でも求意見すらなく期日がばたばたと取り消されていく。
今日だけでも
・来週1週間の期日を原則的に全て取り消すとの家裁からの連絡、
・求意見すらなく一方的に期日取り消しを通告してきた民事部複数(判決言渡し期日を取り消したところもあった。通常、民事の判決期日の傍聴などないに等しいことを考えると、暴走に過ぎるのではないだろうか。)、
・保釈中の結審予定の期日を取り消したいと打診してきた刑事部、
等々と枚挙に暇が無い(反対意見を出しても通ったものはない)。次回期日を指定する際「少なくとも一方は電話会議で」という面食らう差配をした裁判官もいた。
こうしてみると、案外、裁判は、延期が「許容」できるのだなぁと思い知らされる。そんなに不要不急だとは思いたくもないし、その実感もなく、逸機があれば事件全体がおかしな方向に行きかねないことは誰しも理解してようものなのだが。
ところで、名古屋拘置所である。
法務省が一般面会を原則的に不許可にする運用を開始したやに聞き及んで、法的根拠も無くそこまでやるのだろうかと思っていたが、本日、「弁護人等及び領事以外の者については、感染防止のため原則として面会を実施しません」との貼り紙を目にした。
未決拘禁者について言えば、接見等禁止決定を受けない限り、一般面会を行う権利があり、外界から隔絶されている彼・彼女にとり、一般面会が重要であることは当然である。せいぜい施設管理権で、このような重要な権利利益を原則的に一律否定してしまうことは明らかに越権である(国会だって食糧品売り場だって営業中である)。拘置所長は、自身を施設管理権者として上位に見ているのかも知れないが、未決拘禁者は、公判維持のために名古屋拘置所を自宅に指定されているだけであり、それ以外の部分では極力、その権利利益制限は控える必要がある。誤解を恐れず言えば、拘置所長はせいぜい、門番、管理人の類に過ぎないのであり、その権利利益を損なわないように奉仕すべき未決拘禁者に対し、外部との面会による交通を原則一律否定するというのが如何におかしいかは容易に分かろうものである。
面会と面会との間の換気を徹底する、一日の総面会件数に上限を設定するなど、工夫次第で、幾分か減ろうとも、原則ゼロとは比べものにならない充実さのある配慮が可能である。なれば、そうしなければならないのである。上から目線で施設管理を振り回している限り、未決拘禁者の権利利益を極力損なわないようにする、という発想には立てまい。
原則ゼロは行き過ぎである。
(弁護士 金岡)