1年近く前と記憶しているが、愛弁内で、名古屋地検の地下構内接見時に差入れを巡り紛糾した事例がないかの調査があった。多分、差入れが出来る・出来ないで揉めた事例を受けての調査だろうと思っていたのだが・・。

最近になって、名古屋地検から、次のようなお触れ書きが出されている。

「物の授受は次のもの以外認めておりません」
・ 弁護人選任届書
・ 不在・不受任通知書
・ 弁護人となろうとする者の名刺

しかしこれは、刑訴法39条1項「物の授受をすることができる。」に反する、と言わなければならない。弁護人との物の授受を含む秘密交通権は、被疑者の基本的権利にして弁護人の固有権でもあり(判例上も往々にしてこのように指摘されている)、最大限、尊重されなければならないから、その制約の許容性は必要最小限度に留まる。個別の判断において、必要最小限度の制約にひっかかるものもあるだろうが、上記3点以外は全て必要最小限度の制約にひっかかるということは先ず考えられない。
例えば弁護士との弁護契約書はどうだろうか?
大急ぎで被害者との示談書に署名を得たい場合はどうだろうか?
誓約書を作成するのに必要なノート1枚はどうだろうか?

実際のところ、私の経験上、勾留を回避するためにノートを差入れて誓約書を作成し、それを疎明資料にして同日中の釈放を得た経験がある(勿論、検察庁の地下構内接見の話である)。
白紙のノートの差入れに凡そ弊害が認められようはずもないのであり、上記お触れ書きの違法さはこれ以上に多言を要しない。

先方の言い分を想像すると、一時的な逗留であることや、大量の検察弁録等で回転率を上げていかなければならないところ、細々とした差入れを逐一、受け付けて、例外的に差入れを不許可にすべき事情があるかを審査するのは現実的に「大変だ」というのだろう(不要不急なものはあとから刑事施設の方でやってよ、という気持ちもあるのかも知れない)。
しかし、検察庁はこの場合、原則的に差入れを認める義務があるのであり、ということはつまり、そのような審査(もとより、弁護人の差入れは秘密交通権の保障を受けるから、それが弁護人からの差入れであることを確認する限度で行えば足りるし、それ以上の作業は寧ろ禁止である)を行う義務があると言うことである。審査は、検察庁の権利ではなく義務である。権利であるなら「大変だからやめます」というのは分かるが、義務なのだから「大変だからやめます」というのは認められない。

弁護士会は、このような違法な「お触れ書き」については、全国の実態調査と共に、直ちに撤回させるように動くべきだろう。動もすると「施設管理」を振り回す施設は、今回のCOVID-19の絡みでの一般面会の一律禁止方針等、とかく、自らの労苦を軽減するために義務を怠ろうとする。常に目を光らせ、監視しなければならない。

(弁護士 金岡)