担当弁護士から御教示頂いたところによると、当初、家族が保釈に拒否的であったことに対し、それが決して本人の甘やかしではなく、今後の更生環境の調整のためにも必要だということ(同種前科の執行猶予期間中、1年と持たず再犯に至った)を説得して、家族が保釈に協力的になり、無事に保釈に至ったという事例がある。

・・つい最近、相談を受けた別の事例では、異種前科の執行猶予中の再犯に対し、担当弁護士が「6割方、執行猶予が付く」と宣い保釈請求しないまま(本人情報)、案の定、実刑判決になっているものがあり、落差が大きい。

環境調整のための保釈は、事案によっては防御上の要となる。性犯罪や薬物事犯など、本人に矯正すべき嗜癖ないし病的な要素がある場合は、特にそうである。裁量保釈事由にも、防御上の不利益を主要な考慮要素に含めると明文化されているのだから、環境調整のための保釈も、どんどん、前面に押し出し要求していかなければならない。

ちなみに冒頭の件は、それでも第1回前の保釈は通らず、結審後にようやく認められた程度という。一度目の保釈請求の却下に対する準抗告では、治療環境構築の必要性を考慮しても裁量保釈不適当と判断されたというから、裁判所の理解はまだまだである。
二度目の保釈請求の許可に対しては、検察官が抗告し、第一に本人が曖昧に濁している電磁的記録の隠滅のおそれを、第二に相当長期刑が予想されるから逃亡のおそれがある、と主張した。裁判所はこれに対し、第一点目については「結審したということは立証十分と判断したのだから、何を今更」という趣旨に応答し、第二点目については、親が情状証人として出頭したことを踏まえ、保釈保証金を比較的高額に定めれば、逃亡のおそれは小さくはないものの、係属審の裁量の範囲内とした。後者については、担当弁護士によると、前刑取消を合わせてもせいぜい2年未満(1年+1年弱)の服役予想ということで、「相当長期」どころか「逃亡のおそれは小さくない」という評価もどうかとは思うが、それよりは、前叙の通り拒否的だった家族を動かして裁判所の信頼を勝ち得た弁護活動が賞賛されるべきだろう。

(弁護士 金岡)