本欄本年8月22日付け「責任ある言論と利用者の節度」を掲載した頃、実は、地元単位会の刑弁系MLで投稿を無断転用されるという被害に遭っていた。何故分かったかというと、家事事件の相手方代理人が、代理人間の主張書面に、私の投稿を無断引用して寄越すという不見識な行動に出たからである。
咎めた時点では、加害弁護士より「問題ない」という趣旨の文書の送付を受けたが、その後、刑事弁護委員会が介入した御陰か(そういえば、既に愛弁会報に掲載されているが、今年度の刑弁委員長は文字通り前代未聞の選挙戦となり、鬼頭治雄弁護士が委員長に就任されている。このことも何れ、本欄でも取り上げたいと思う。)、事件から約1週間で、不見識を詫び、二度と同種行為に及ばない趣旨の謝罪を受けることが出来、こちらも矛先をおさめることとした。

さてもMLの運用とは、難しいものである。
少人数にすれば、構成員間の信頼関係があるため、精度の高い情報、深い議論も可能な反面、裾野の広がりがない。信頼関係があるため投稿に「敷居が高い」(誤用の方)ことはないとしても、お馴染みの顔ぶれがお馴染みに回答するだけになりかねない。そもそも論として少人数だから大多数にとり利用価値がない。
他方、大人数にすれば、余り突っ込んだ発言は難しくなるだろうし(無断転載が実証されてしまうと大方に萎縮効果を及ぼすだろうことは請け合いである)、「敷居の高さ」はともかくとしても利害関係人が潜んでいる危険を考えると慎重さが必要になる。結局、当たり障りのない範囲以上はDMで、となりかねないが、そうなると「読んでいるだけでも得るものがある」というMLの存在意義が乏しくなり過疎化は必至だ。

つらつら考えるに、
1.なにより気軽に投稿できる必要がある。
そのためには、構成員にきちんとした守秘義務、無断転載禁止を科すと共に(勿論、現代社会に於いては、最早言わずもがなの常識には属するが)、構成員を随時、確認できる措置が必要だろう。
2.回答者の質も大事である。
偏らないよう、それなりの頭数が必要であるし、自覚的にML上での議論を展開するだけの気構えも求められる。こればかりは簡単に要請できるものではないが、時に管理者が意識的に手配する必要もあろう(投稿の棚晒しは絶対にダメだろう)。
3.紛争解決措置。
ML規模が大きくなればなるほど、いざというときに管理者がきちんとした措置を取る体制が作られていなければならない(と、今回、痛感した。刑弁委が迅速に動いてくれなければ、紛議調停をやるか?個人的につるし上げるか?と悩む隘路に陥り、どう動くにせよ、紛争は拗れ大仰になっただろう。)。

上手く利用すれば、一石三鳥にも四鳥にもなるのだが・・案外、老舗のMLほど、構成員間の信頼関係に甘え、綻びを知らず漫然と運営されているかもしれない、と思った。

(弁護士 金岡)